中古レコード店店長の
経営ブログ

中古レコード、CDの買取や販売について、また日々の経営について、考えたこと、伝えたいこと、などいろいろ書いていきます。月に1~2回、更新していく予定です。

中古レコード店の店主は、こだわりが強くてガンコで無愛想なのは何故か?

更 新:2021-12-31
テーマ:店主、自営業者、サラリーマン


■超一流アスリートも皆ガンコ?
中古レコード店、古書店に限らず、自営業の世界で成功した者は、ほぼガンコ者で占められていて、そうではない人を探すほうが難しいぐらいだ。。
特に高級専門店、名店、と言われる店の店主は、例外なく強烈なガンコ者だ。
ラーメン店、ソバ屋などの飲食の名店は皆そうだし、企業の名物社長、これから述べる一流アスリートも、驚くほどのガンコ者である。


プロ野球の、王貞治、イチロー、野茂英雄、という、,誰もが知るスーパーヒーローたちを例にあげよう。
彼らの共通点は、他に類を見ない変則フォームにあり、
それを監督から直すよう命令されているが、頑として受け入れず、自分流を貫き超一流になっていることだ。

は若い頃、一本足打法を二本足に戻すように上に言われたがそれを断り、一本足をガンコに貫いて世界のホームラン王となった。
イチロー、野茂 にいたっては、やはり変則フォームの改造を断ったため、監督と対立し、へたをしたら選手生命もあぶなかった。
最近では、
大谷翔平 が日ハムに入団する前、二刀流にガンコにこだわったため、大いに物議をかもしたことは記憶に新しい。

結果的に皆大成功したから良かったものの、
厳しいプロスポーツの世界で、上に逆らってまで自分を貫くというのは、実は大変なことなのである。
つでに言うとテニスの 錦織圭 も、大人しそうに見えるが、相当なガンコ者らしい。

■ガンコな名店、昭和のラーメン店「冨公」の話
中古レコード店や古書店も、名店といわれるところは、ガンコの代表のような存在である。
こういう店に、文句の一つでも言おうものなら、逆にコテンパンにやられるから、店主に逆らうお客さんはめったにいない。

ガンコといえば、ラーメン屋の店主もガンコ者ぞろいで知られている。

昔、狸小路に「富公」という、醤油がうまい有名ラーメン店があり、一度だけ入ったことがある。 (今はない伝説の名店!)


この店主が名物オヤジで、お客さんがカウンターにすわろうと席を選んでいると、ぶっきら棒に「あんたは、ここ!」と座席を指定してくるという。
また、状況によっては、「ちょっとそこ、つめて!」と大きな声で言って、食べてる最中のお客さんでも、席を移動させられるという。


食べてる途中での座席の移動というのは、他には聞いたことがない。
この店主は、声が大きいが、顔も怖かったから、言われたほうはドキッとしたにちがいない。


もう一つ言うと、冨公は、ゆでた麺を大きく平べったいザルですくった麺を、頭上高く放り上げ、それをお腹のところで「バシャッ!」と受け止め、水を切る、という動作が有名だった。(こういう平たいザルは、今はめっきり見られなくなった。)
その水は周囲に大きく飛びちり、L字型のカウンターの満席のお客さんの顔や衣服にかかる 。
その時は、客席でワーッという悲鳴のようなどよめきがおこるものの、誰一人文句を言うものはいない。



店主は、相変わらず激しい動きでラーメンを作り続けているが、お客さんのほうは、ふたたびしんと静まり返り、大人しく出されたラーメンをすすっている。 その光景が対照的で印象に残っている。
頭を垂れて「ありがたく、ラーメンをチョウダイシマス」という感じだった。

この店主は何故こんなことをしていたのだろうか。

何もパフォーマンスを見せたくて、麺を高く放り上げていたのではないと、私は思う。
この店主はただ、少しでもうまいラーメンを作り、それをすばやくお客さんに提供することを考え必死にガンバッタ結果、こういうスタイルになったのではないだろうか。

名店というのは、どんな店でも、絶対に妥協を許さない厳しさと、強い信念を持っているものだ。


だからこういう店に中途半端に文句でも言おうものなら、大変だった。
割れんばかりの大声で、頭ごなしに怒鳴られるか、へたをすれば店の外に放りだされるはめになる。 (こういうことは昭和の頃はよくあったが、最近はさすがに少なくなった。)


■「味の三平」のガンコな話
「味の三平」という、誰もが知る全国的な有名店がある。
ここの創業者で、味噌ラーメンを開発したことで有名な、故大宮守人さんは、しょうゆラーメンを注文したお客さんに、「うちに来て、なぜ味噌を注文しないんだ!」といって怒った話は、あまりにも有名だ。

もちろんメニューには「しょうゆ」もあるわけだから、注文しても何らおかしくはないのだが、店主の自分が創った味噌ラーメンへの強烈なこだわり、自負を感じさせるエピソードだ。


■名店の条件とは何か
ここまでお読みいただいた方は、ラーメン店と中古レコード店(古書店)がよく似てることがお分かりだと思う。

ラーメン店はラーメンを自分で創る。
中古レコード店も商品を自分で買い集め、店を創る。

そこには、商品や店に対し、店主の強いこだわりと主張、個性が強く反映されているのである。

今はラーメン店も、お客さんのニーズに敏感に対応するように変わってきている。 昔は、味噌、塩、醤油、の3種しかない店が普通だったが、今は、メニューも困るぐらいに多くなり、さらに油多めとか、麺硬め、などの細かい注文にも対応する店が増えてきた。
この業界の競争の激しさをあらわしているといえよう。


しかし、はっきり言うが、こういう店にいい店はないと思う。

本当に味や中身に自信があれば、メニューをそんなに増やす必要はないし、お客さんに変にすり寄ることもない。
メニューの多さは自身のなさの表れであり、信念の弱さの証明でもある。

本当にいい店というのはもっとシンプルで力強く、お客さんに媚びたり迎合したりというようなところがない。
一見何気ないようでも、店主の強い個性、主張がしっかり表現されている。


(※世間でいう名店とは、名店というより人気店であり、ここで言ってる名店とは必ずしも同じではない)

■中古レコード店の店主はガンコで無愛想

名店というのは、たしかにガンコで、店主は無愛想な人が多い。
しかし、ラーメン屋は「お客さんに喜んでもらえるような、うまいラーメンをつくりたい。」と思って必死に努力してるのと同様に、
レコード屋もお客さんに「いい音楽を聴いてほしい。」という思いであふれている。

まさにお客さんあっての店であり、店はそのことを十分理解している。

しかし、それなら何故そんなに無愛想なのか。

ガンコはしかたがないにしても、もっと接客をキチンとやり、たまには、ニコニコしたらいいではないか、と思う人もいるだろう。


■中古レコード店はもともと接客が大の苦手
中古レコード店や古書店の店主といえば、無口でブスッとした気難しい人、ガンコで偏屈な雷オヤジ、人と違うことを考えてる変人、などといった悪い印象をお持ちかもしれない。(たしかにその通りではあるが‥)

こういう店の店主というのは、一つには「古いものの価値を鑑定し、新しい命を吹き込む仕事」をしているという意味で、一種の専門職、知的職人であるし、もう一方では「店創り」という意味で、創造的なクリエーターでもある、ということだ。

そして、その専門知識を生かし、いかにいいものを仕入れ、適切な価格で販売していくか、また、どうやっていい店を創り、ながく商売として成り立たせていけるかが、絶対的に重要なのである。

それに比べると接客の重要性というのは、かなり低いと言わざるを得ない。
我々の商売というのは、いい商品があれば勝手に売れていくし、大したものがなければ売れないのであって、それは「接客の良し悪し」とは、ほとんど関係がないのである。

そしてすでにお分かりのように、無愛想の最大の理由は、この業界の人たちは、もともとが性格的に接客の苦手な人が多い、ということだろう。
また社交的なことが苦手だからという理由で、この仕事を選んでいる人もいると思う。


私の知る限り、サラリーマンのように、誰に対してもソフトでていねいな対応を、自然にできる人は、ほぼいない。

世の中のサラリーマンという人たちを観察すると、社交的で時間にも正確、電話やメールのやりとり、酒の付き合い、年中行事や冠婚葬祭もそつなくこなし、常識にあふれ、周囲とうまく調和していこうと努力していることがよくわかる。

私には逆立ちしてもできそうにないが、その完璧なほどに調和的な生き方には、感心するほどである。
こういう協調性というのも、一種の才能だろうとつくづく実感する。


■レコード屋の店主は、接客ではなく、自分の仕事を通じて、お客さんに貢献したいと思っている

誤解のないよう言っておくと、中古レコード店も接客は上手くはないものの、「お客さんのため」、という思いは当然ある。
しかし店主はその思いを、あくまで自分の「仕事」を通じて実現させたい、と考えているのであり、「接客」を通じてではない。


店の商品はすべて店主がセレクトし、仕入れたものは自分で値付けし、店の商品構成も全て自分で考えたものである。(このへんが、コンビニなどとは決定的に違う)
当然、店に対する思い入れは、相当に強いものがある。


そして店主は、お客さんに買ってもらえることで初めて、自分の仕事に対する思いが通じていることを実感できるのである。
しかし、逆になかなか買っていただけないお客さん、つまり思いが通じない相手には、自分が否定されてるように感じてしまうのだ。
(こういう受け止め方感じ方も、コンビニにはないことだ)


よく、「買わないお客さんは店主に嫌われる」と思っている人が多いようだが、これは、単にお金だけの問題だと思ったら大きな間違いだ。


名店と言われる店の店主ほど、自分の仕事には人一倍高いプライドを持っており、お客さんには正当に評価してもらいたいという思いは、相当に強いものがある。
店主の仕事に対する評価とは、すなわち店に来たお客さんが買って下さるかどうか、でしかない。


逆に言うと、買わないお客さんは、自分の仕事を否定しているのだと考えてしまう。 当然面白くないし、無愛想にもなるだろう。
気分の起伏の激しい店主なら、なおさらだ。


■単に円満なだけの人はこの業界では成功できない

では人柄が円満ならそれでいいかというと、そんなことはないのである。
実は円満タイプの人は、この業界にはめったにいないし、またこの世界で成功するということも考えにくい。


かつて私の周りでも、脱サラし古本屋を開業した人がいた。
この世界では珍しく、円満な人柄で、サラリーマンとしても実績のある人だったが、全然うまくいかず、わずか3年でやめてしまった。

古書店業界も気難しい人が多いことで有名だが、その人はそんなことも全くなく、接客は実にうまかったのだが、結局いい店を創ることはできなかったのである。


接客がうまいということと、いい店を創ることとは、全然別のことである。
その人は、店主としては何かが欠けていたのだ。


■自営業者とサラリーマンの生き方の違い

基本的に自営業者というのは、一般のサラリーマンとは逆で、周りの人や世間とは関係なく生きているようなところがある。
そして、人とは違う、自分だけの行き方考え方を重視し、それが強い個性となっていく。
自分にしかできないことは何だろうかと常に考え、それを追求していく生き方をするのである。


サラリーマンの常識は必ずしも自営業者には当てはまらない。
脱サラして店を始めた人がよく大失敗するのは、そういうことがわかっていないためだ。

逆にいうと、中古レコード店、古書店(特に創業者)は、サラリーマンのような協調的なこと、例えば接客などは苦手な人が多い。

もし私が接客が得意な人だったら、普通のサラリーマンとして一生を送っていたかもしれない。



■次回以降の掲載予定

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※以上、順不同、月1~2回の掲載予定。

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