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レコード屋の平台の欠点とはなにか。レコード棚を変えれば業績は大きく変わる!
更 新:2025-02-28
テーマ:中古レコード店の経営
中古レコード店の基本戦略には、簡単に言うと、大衆路線と高級路線がある。前者は縦型の棚が、後者は平台がよいと思われるが、そういうことを意識しながら営業している店主は少ない。レコード店といえば平台が定番だからと、たいした深い考えもなく平台を使い、撤退を余儀なくされた店も多いと思われる。今回は平台を使うことの、メリット、デメリット、リスクについて考えていきたい。
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<目次>
❶レコード屋の棚が、平台である必要はない。
❷平台がダメな理由。
❸「圧縮陳列」の絶大な販売効果!
❹変なこだわりは捨てるべし!お客の視点で考えよ。
❺科学的な視点の導入で、売り上げは劇的に向上する!
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❶レコード屋の棚が、平台である必要はない。
レコード屋の棚と言えば「平台」だ。平台でなければレコード屋にあらず、といわんばかりに、ほとんどの店が平台を使用している。札幌の店もほぼ平台だ。店主からすると
見通しが効くので万引き防止に。
お客さんにとっても、
レコードが見やすい
というメリットがある。そして、やっぱり平台でなくちゃ!という店主やレコードファンの思いもある。
だが、はたして本当に平台がベストなのか。ただ、そう思い込んでいるだけではないだろうか。平台でなくてはいけないというキマリはない。このことについて突き詰めて考えている店主はいるのだろうか。実は平台は、営業的にみると大いに疑問なのだ。
❷平台がダメな理由。
実は、平台には大きな欠点がある。枚数をあまり置けないのだ。量が少なければ当然売り上げにも限界がある。店売り重視で、狭い空間に大量のレコードを置くなら、縦型の棚の方が断然いい。
(※ネット販売がメインだから、店売りはどうでもいいというのなら、話は別)
店売りにとって、量が置けないのは致命的だと思う。ただ、業界では何となく慣習的に平台を使ってきた。しかし、店内販売の売り上げ増進を図りたければ、狭くとも縦型が一番いい。わたしは長年、縦型を使ってきた。困ったことは一度もない。
当店のことについて少し書く。当店は札幌の中心部からはずれたところにある小さな店で、営業時間も短い。しかも、わたしは当初、レコードについてはまったくのシロウトだった。普通に考えたら繁盛どころか、すぐにつぶれてもおかしくない。にもかかわらず、長年やってこれたのは、一つはこの棚のお陰だと思っている。手前味噌ではあるが、当店は業界の常識外である「物量作戦」で売り上げをあげてきたのだ。
当店の基本戦略を簡単に言おう。まず、宣伝広告を金をかけてガンガン攻勢をかけ、まずはレコードを大量に集める。次に、集めたものを安く大量に店に並べる。これで、お客さんはどんどん来る。安いから大量に買っていってくれる。そうやって集めたレコードをどんどん金に換える。こういうやり方を、
薄利多売と言う。
どんな経営にも、基本戦略は必要だ。つまり「こうすれば絶対に利益が出せる」という型、スタイルがなくてはいけない。
戦略がないのは、頭がないのと同じことだ。
とにかく、当店は薄利多売ですべてを回してきた。それ以外のやり方もあるだろうが、儲けを出すには、薄利多売が最も簡単でわかりやすい。
(※薄利多売と真逆の戦略に
「ブランド戦略」がある。
高級化路線と言ってもいいかもしれないが、こっちの方が金はかかるし難しい)
薄利多売戦略において、なぜ縦型の棚が必要なのか、もう少し詳しく説明しよう。
店頭在庫が、平台で1万枚の店があったとしよう。これを縦型に変えたらどうなるか。最低でも2万枚以上、つまり倍以上おけることになる(天井の高さにもよる)床から天井までびっしりと何列にも置けるからである。
一方の平台は、腰の部分しかモノが置けず、無駄な空間が多すぎる。(※床にダンボールに入った均一品を置いている店はある)
単純に言うと、
在庫量が倍だと売り上げも倍になる。一方、家賃は変わらないが、その他の仕入れや経費は倍近くになるかもしれない。最終的に、売り上げから仕入れと経費を差し引いたら、残る利益はおそらく、2~3倍ぐらいになるはずだ。
ここまでわかっていて、やらない手はないだろう。
❸「圧縮陳列」の絶大な販売効果!
経営コンサルタントの
故・船井幸雄氏によると、量は多ければ多いほどよく、増えた分以上にお客さんは来るそうだ。実験で、
店の商品をギュッと半分の面積に圧縮し、
カーテンで仕切るなどして、店の売り場を半分にしてみたら、それだけでも売り上げが増えたという。ボリューム感が増し、お客はつい買いたくなるらしい。これがいわゆる、
圧縮陳列! ドン・キホテーテがその代表だ。
話はまだ続く。
今度は空いた空間に、さらに商品を詰め込んでみる。すると、商品量が倍になり、売り上げは倍以上になったというのである。
圧縮陳列おそるべし!お客から狭い狭いと言われ、高いところのモノは手が届かないとか見えにくいとか言われながらも、当店があえて床から天井近くまでびっちりとギュウギュウに詰め込むのは、圧縮陳列の集客効果を狙ってのことだ。なにしろ物量の迫力が凄いのだ。
❹変なコダワリは捨てるべし!お客の視点で考えよ。
人間はモノがびっちりあると、つい行きたくなる。特別いいものではなくとも、お手頃価格のモノが大量に入っていると、行かざるを得なくなる。これは人間の狩猟本能だ。
一方、獲物がまばらなところは魅力がない。そういう店は閑古鳥しかいない。どっさりあるから行きたくなる。行列のできる店には誰もが注目するだろう。噂が噂を呼び、人が人を呼ぶのである。人間とはそういう生き物だ。
だがおかしなもので、
自分が店主になったとたん、当たり前のことがわからなくなる。
つまり、お客の立場で考えられなくなってしまう。へんなスケベ心が出て、なぜか広くゆったりしたこだわりの空間を作りたくなる。転倒した頭で考えるから、目が曇るのだ。
ところで、最近、名前が横文字で、何屋さんかわかりにくい店がやたらに増えた。店主はカッコつけたつもりだろうが、よく観察してみるとそんなにお客さんは入っていない。こういう、お客を無視した店づくりは失敗のいい見本だ。レコード屋が平台に固執するのも、基本的には同じこと。
どんな商売でもそうだが、うまくいっていない店主は、まず自分の余計なこだわりを全部捨て、お客の立場に立って考えるみるべきだ。
レコード屋のお客は、量を求めている。それには縦型の棚で、床から天井までビッチリ並べてみたらいい。すぐに効果は現れる。通路なんか狭くてもかまわない。
(※この記事では平台を全否定しているが、
オリジナル重視のブランド戦略をとるのなら、確かに平台も悪くはない。
問題は、大したブランド品もなければ、量も少ないという、中途半端な店が多いということ。ブランド戦略は難しいというのなら、思い切って物量作戦に切り替えた方がいいだろう。ただし、札幌ではそういうダメな店は、ほとんど淘汰されてしまったようだが)
❺科学的な視点の導入で、業績は劇的に向上する!
現代の商店経営は、科学的・客観的なものでなければいけない。考えるべきは棚だけではない。価格設定、宣伝広告、防犯、営業時間、ネット販売など、多岐にわたる。あらゆる部分に科学のメスを入れ、適切な経営を心掛ければ、業績は劇的に向上する。
先にも触れたが、何の取柄もないわたしが、なぜこんなに長くやれているかというと、ひとえに科学的な経営に徹してきたからだ。真っ先に潰れてもぜんぜん不思議ではなかったが、その分、どこよりも科学的な経営手法については考えてきた。一方、学歴だけは優秀でも、何も考えずにやってきた中堅どころの店主は、どんどん潰れていった。科学はウソをつかないのだ。(了)
次回以降の掲載予定!
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※以上、順不同。月1回の更新予定。
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