中古レコード店店長の
経営ブログ

中古レコード、CDの買取や販売について、また日々の経営について、考えたこと、伝えたいこと、などいろいろ書いていきます。月に1~2回、更新していく予定です。

悪いヤツらとどう戦うか。店主の百戦必勝の防衛戦術!

更 新:2024-05-31
テーマ:中古レコード店の経営


<目次>
❶トラブル処理も仕事のうち!
❷悪いヤツの弱点を思い切り突く!
❸代金を払おうとしない悪質な店主から、全額の回収に成功したT社の事例。
❹タチの悪い客の勤務先に電話を掛け、問題の解決を図った店主の話。
❺万引き犯の名前を出して撃退した当店のケース。

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❶トラブル処理も仕事のうち!
世の中、悪い奴はごまんといる。ただし、ここでいう悪いヤツとは、ちょっとズルイ人、タチが良くない人のこと。払うべき金を払わない、チョロまかす、嘘をつく、騙す、責任を放り出してトンズラする、大声で怒鳴り散らす等々、警察沙汰にするほどではないが、この手のちょっと悪いタイプはいくらでもいる。自営業をやる以上、トラブルは付き物。イザというときの覚悟は必要だ。

自営業者は「自分の身は自分で護る」が原則だ。誰かが護ってくれるわけではない。一国一城の主といえば聞こえはいいが、すべてのことが自己責任。トラブル処理も、仕事のうちだ。 私も開業して最初のころは、様々なトラブルを経験した。悪いヤツとのトラブル、戦いについては、これまでも当ブログでお伝えしてきている。今回は私の経験上、最も有効と思われる解決の方法についてご紹介する。

❷悪いヤツの弱点を突く!
悪いヤツには大きな弱点がある。ヤツらは自分の悪事をバラされ、日のもとにさらされることを極度に恐れるのである。そこで戦い方としては、まず相手に関するあらゆる情報をつかむ。そしてそれを各方面の関係者に画像や住所、氏名の公表なども視野に、その悪事をバラしてやるのだ。そうすることで、ほとんどの悪いヤツは撃退できる。 よく書店やレコード店などでも、万引き犯の画像を公開する、という事例がある。大きなニュースにもなったが古本屋のまんだらけなどがいい例だ。

悪いヤツも、普段は善人の皮を被っている。そのバケの皮をちょっとだけはがしてやる。そうすることで、相手に大きなダメージを与えることができる。 上手くいけば、いっぺんに解決できるかもしれない。

私はこの戦法で、実際に数々のトラブルを解決してきた。また、解決までいかないケースでも、相手にはそれ相応のダメージを与えてきた。実際に知り合いの業者がやはりこの戦法で問題を解決した事例もいくつか知っている。

ただ一方で、あまり相手を追い詰めすぎるのも考えものだ。目的は報復ではなく防犯であり、業界全体の健全化にある。 相手へのダメージは、どの程度までにするか、最初によく考えるべきだ。ではさっそく撃退に成功した具体例をご紹介する。

❸代金を払おうとしない悪質な店主から、全額の回収に成功したT社の事例。
世の中のトラブルのなかで最も多いのは痴情のトラブルと、もう一つはやはり金銭トラブルだろう。金にだらしない人は実に多い。あわよくば踏み倒してやろうというヤツもいて、始末に悪い。 自営業者なら誰でも、一度や二度は嫌な思いをしているはずだ。この手の相手には、普通に催促しても全然ダメで、これでもか、というぐらいの強力なパンチを遠慮なく何発もお見舞いする必要がある。以下でとりあげたT社の事例をお読みいただきたい。

埼玉県にあるT社は、全国の中古レコード店へ向けて袋やダンボールなどの資材を販売する会社。北海道の中古レコード店とも多くの取引がある。あるとき、社長は北海道の中古レコード店の一つ、A店のことで怒っていた。 売掛代金をいくら請求しても、払ってくれないからだ。 A店の店主は、温厚そうに見えるが金にはだらしなく、ときに嘘をついてごまかす、という最低の男だ。支払期限はとっくに過ぎているが、いっこうに払う気配がない。このときも適当に引き延ばし、逃げ切ることを考えていたようだ。

社長は業を煮やしていた。北海道と埼玉という距離だ。行って直接催促するわけにもいかない。そこで社長のとった行動は、驚くべきものだった。なんと、 A店の周辺にある中古レコード店にかたっぱしから電話をかけ、こう言ったのだ。「実はA店が、なかなか代金を払ってくれないのです。もしA店と付き合いがあるなら、店主を説得してくれませんか?」この電話のおかげで、A店の未払いの件は、いっぺんに市内全ての中古レコード店の知るところとなり、その噂はレコード店回りのお客さんの耳にまで入るようになってしまった。 これには、さすがのA店も参ってしまった。そしてしぶしぶながら全額支払いに応じたのである。

  このケースでは、T社が隠すことなく、広く周囲の中古レコード店を巻き込んだことが解決につながった。 取引相手のことは他言すべきではない、という変な固定観念を持ってる人が多い。しかし悪い相手の場合、内密にする必要はまったくないのである。 あくまでも悪いのは向こうなのだ。

悪徳業者が相手だった場合は、その会社の法人登記謄本をとったり、ネットなどを見て調べる。電話だけでなく、ファックス、手紙なども有効だ。ちょっと手間とお金がかかるが、悪徳業者の経営者を丸裸にできるかもしれない。 ここまでわかれば、解決したも同然だ。

❹悪質なお客の勤務先に電話を掛け、問題の解決を図った店主の話。
相手の勤務先に電話したケースもある。市内の中古レコード店、E店では、お金の持ち合わせのないお客に対し、店が取り置きをしてあげていた。もちろん、わざわざ取り置きする以上、後でちゃんと購入してもらうことが前提だ。ところがこの取り置きレコードについて、店主を悩ます問題が発生していた。

それは、ある常連客K氏の取り置き分が、だんだん増えてきていることだ。お金ができたときに、この中から適当に購入してくれれば、何の問題もない。しかし、K氏は取り置きはするがなかなか購入せず、とうとうダンボール箱二つ分にもなってしまった。客にとっては、欲しいものをとりあえず確保できるから、有難いサービスではある。しかし、店としては後でちゃんと購入してくれるかどうかの不安がある。 もしも購入してもらえないということなら、店は大きな損失だ。そういうことなら、他の欲しいお客にサッサと売ってしまったほうがずっといいからだ。

そんなある日、そのE店から私の方に相談があった。問題のお客K氏は、H銀行に勤めている人だという。そこで私は、 勤務先がわかっているのなら、電話を掛けてこちらの状況を説明されたらいかがですか、とアドバイスした。

E店の店主は、さっそくそのD銀行に電話を掛けた。すると即座にK氏の上司という人が二人、E店まで菓子折り持って謝罪に来たという。この成り行きにはE店主もすっかり上機嫌で、こんなに簡単に解決するならもっと早くにやっていればよかった、と喜んでいた。

金銭トラブルについての定跡の一つに、相手の奥さんや勤務先、または友人知人宅など、相手が関係するあらゆるところに連絡する、という手法がある。(サラ金などはこれをよく使う)効き目は抜群。一発で問題が解決する場合も多い。ただ、連絡するには、いろいろ調査をする必要がある。

悪い相手に対し、遠慮や手加減は無用である。そして泣き寝入りは絶対にダメだ。泣き寝入りすると、相手はそれにつけこんで余計ひどい事になりかねない。「倍返し」という言葉があるが、二倍、三倍と、相手を叩きのめすつもりでやるのがちょうどよい。自分の身を自分で護る覚悟がない人は、自営業をやるべきではないだろう。

❺万引き犯の名前を出して撃退した、当店のケース。
さて、当店で起きた万引き事件について書く。それは、50代後半のなじみ客による長期間にわたる万引き行為だった。犯人のK氏はジャズのお客で、札幌の中古レコード業界ではわりと知られた存在だった。当店でも世間話をよくしていた。

ところがあるとき、K氏がきた翌日に、必ず高いレコードがなくなっているということに気が付いた。K氏はよく来る割にはほとんど買うことがなかったという点も気になった。観察しても万引きの瞬間の目撃まではいかなかった。しかし動きがどうもあやしいなと思っていた矢先のこと。他店の店主から有力な情報が入った。その話の内容は決定的で、疑う余地はなかった。やはりK氏が万引きしていたのだ。そう確信した私は、その日のうちに以前聞いていたK氏の住所から調べた番号に電話をかけ、出入り禁止の旨を言い渡したのである。

まあ、ここまではどの店でもやることは同じだろう。普通は出入り禁止処分で、オシマイだ。私も盗まれたレコードを取り戻すとか、損害賠償を請求するなど、まったく考えなかった。面倒なことはもうけっこう、いやなことは一日も早く忘れてしまいたい。そんな気分でいっぱいだった。

ところがである。この事件にはまだ続きがあった。なんと、K氏がその後、他店で万引きを繰り返しているという情報が入ってきた。被害にあっている店主は気が弱く、万引きに気づいていながら、なかなか本人に告げることができず悩んでいる、というのだ。さらにもう一つ。K氏はその店から盗んだレコードを、さらに別の店に転売。気づいた店主は転売先の店に電話を掛けて何とか返してもらったのだという。

私は後悔した。自分の店のことしか考えていなかったため、業界全体のことまで気が回らなかった。悪いことは拡散するのだ。核兵器が世界に拡散するのに似て、万引き犯罪も放置すればどんどん拡散していく。 「アリの一穴」という言い方がある。悪行は、最初の小さな段階でピシャリと止める必要がある。いったん大きくなると、余程のことをしない限り止められない。アリの一穴が、巨大なダムの決壊にまで繋がっていく。

今回の万引きが他店に拡散したことは、私の責任が大きい。私はK氏の事件について、黙っているわけにはいかなくなった。暴走するK氏を、止めなければいけなかった。そのことに気づいてから、同業の中古レコード店や常連のお客にK氏の事件のことをどんどん話すようにした。業界全体に話を広めるべく、K氏の名前、年齢、顔つき、服装、事件の経緯なども、こと細かく話していった。

効果はテキメンだった。たちまち市内の全中古レコード各店で、予想以上の大きな噂となったのだ。当然その結果として、K氏は二度と再び市内の中古レコード店には出入り出来ない身となった。ネライは的中。私のミスから他店に拡散した万引き事件だったが、最終的には完全に抑え込むことに成功。業界を騒がせた一連の事件も、ようやく終わりを迎えたのである。

犯人の名前を出すことによる犯罪抑止効果はすごかった。もちろん、この手法は劇薬だ。一歩、使い方を間違えると、取り返しのつかないことになる。名前を出すときは、慎重のうえにも慎重でなければならない。今回はレコード業界へは二度と出入りさせないことが目的だ。勤務先や家庭には言うのはやりすぎだ。

■自分のことは、自分で始末をつけるべし。
ところで最近の人は、そんなことまで本当にやっていいのかと不安に思うようだ。私の周囲にも、そこまでしなくても‥と言う人が何人もいた。 だが、そういう一見「いい人」「常識人」に限って、いざ自分が被害にあうとどうしていいかわからない。結局こちらに泣きついてくるのである。いい人ぶりたいのはわかるが、自分のことは自分で始末をつけられるよう、最初からしっかり考えておくべきだ

そのうえで、必要なことは恐れることなく断固としてやる。自分の身は自分で護る。絶対に泣き寝入りはしない。そして業界全体についても公的な責任を持つ。繰り返しになるが、そういういう気概がない人は、自営業はやってはいけない。

また、なぜ警察に相談しないのか、という疑問があるかもしれない。これについては当ブログでもさんざん書いてきたが、 万引きなどの軽犯罪については、警察はあまり期待通りに動いてはくれない。あてにするとバカを見るのだ。警察はそもそも凶悪犯罪、大きな事件にしか興味がない。警察をあてにできない以上、自衛の手段は日頃からしっかり考えておくべきだろう。 (了)


次回以降の掲載予定!

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※以上、順不同。月1~2回の更新です。

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