中古レコード店店長の
経営ブログ

中古レコード、CDの買取や販売について、また日々の経営について、考えたこと、伝えたいこと、などいろいろ書いていきます。月に1~2回、更新していく予定です。

悪質なトラブルメーカーと、どう戦うか。 百戦必勝のトラブル退治はコレだ!

更 新:2024-05-26
テーマ:中古レコード店の経営

自営業者にとって、トラブル処理は必修科目だ。トラブルを放置していると、やがては経営崩壊を招くことになりかねない。今回は悪質なトラブルメーカーとの戦い方を、実例をあげながらご紹介する。


<目次>
❶トラブル処理も仕事のうち!
❷悪いヤツの弱点を思い切り突く!
❸代金を払おうとしない悪質な店主から、全額の回収に成功したT社の事例。
❹タチの悪い客の勤務先に電話を掛け、問題の解決を図った店主の話。
❺万引き犯の名前を広めて撃退した、当店のケース。
❻自分のことは、自分で始末するべし。 _____________


❶トラブル処理も仕事のうち!
世の中、悪い奴はごまんといる。ここでいう悪いヤツとは、ズルイ人、店主の指示にしたがわないタチの悪い人のことだ。 払うべき金を払わない、チョロまかす、嘘をつく、騙す、責任を放り出してトンズラする、不当な要求をする、悪口を言いふらし営業妨害をする、脅迫をする・・、等々

警察沙汰にするほどではないが、この手のトラブルメーカーはいくらでもいる。 店をやる以上、ちょっとしたトラブルはよくあること。小さなトラブルは、自営業には付き物だと思ったほうがいい。トラブル処理も大事な仕事だ。 店主たるもの、どんな問題が発生しても、しっかり対応できるようにしたいものだ。

私も開業の当初は、様々なトラブルに見舞われ、ずいぶん勉強させられた。そのおかげもあり、現在があると思っている。経験が一番の財産だと今は思っている。トラブルについては、これまでも当ブログでお伝えしてきている。今回は、抜群の高価を発揮する対処法、戦い方についてご紹介したい。

❷悪いヤツの弱点を突く!
悪いヤツらは、自分の悪事を世間にバラされることを最も嫌う。極度に恐れているのである。そこがヤツらの大きな弱点だ。戦いに入るさい、まずやるべきは、相手についての情報をできるだけ多く集めることだ。 これができなければ話にならない。 そして各方面の関係者にその悪事を少しずつバラしながら、交渉を有利に運んでいく。

そうすることで、ほとんどの場合、動かなかった交渉が急に動き出したり、または相手を撃退できたりするのである。よく書店やレコード店などでも、万引き犯の画像を公開する、ということがある。以前大きなニュースにもなった、古本屋の「まんだらけ」の事例もそうだ。

情報を秘匿せずにオープンにしていくことが、問題の解決につながるのだ。

悪いヤツも、普段は善人の皮を被っている。そのバケの皮をちょっとだけはがしてやる。相手には、予想以上の大きなダメージになる。 上手くいけば、問題がいっぺんに解決できる。

私はこの戦法で、実際に数々のトラブルを解決してきた。また、解決までいかないケースでも、相手にはそれ相応のダメージをしっかり与えてきた。知り合いの業者でも、この戦法で問題を解決した事例もいくつも知っている。

ただ一方で、留意しなければいけないことがある。 必要以上に相手を追い詰めすぎてはいけない、ということだ。目的は報復ではなく防犯であり、業界全体の健全化にある。 相手へのダメージは、どの範囲までに留めておくべきか、最初によく考える必要がある。 ではさっそく、具体的な成功例のご紹介に入りたい。

❸代金を払おうとしない悪質な店主から、全額の回収に成功したT社の事例。
世の中で一番多いトラブルは、金銭トラブルと思われる。 金にだらしない人はあまりにも多い。あわよくば踏み倒してやろうというヤツもいて、始末に悪い。自営業者なら誰でも、一度や二度は嫌な思いをしているはずだ。この手の相手には、 普通に催促しても全然ダメで、これでもか、というぐらいの強力なパンチを遠慮なく何発もお見舞いしていかなければいけない。こういう人達は、 人一倍、鈍感な人種なのだ。以下でとりあげた、T社の事例をお読みいただきたい。

埼玉県にあるT社は、全国の中古レコード店へ向けて袋やダンボールなどの資材を販売する会社だ。北海道の中古レコード店とも多くの取引がある。社長は北海道の中古レコード店の一つ、A店のことでイライラしていた。 売掛代金をいくら請求しても、払ってくれないからだ。 A店の店主は金にはだらしなく、ときに嘘をついてごまかす、というダメ男の典型だ。支払期限はとっくに過ぎているが、いっこうに払う気配がない。このときも適当に引き延ばし、逃げ切ることを考えていたようだ。

社長は業を煮やしていた。北海道と埼玉という距離だ。行って直接催促するわけにもいかない。そこで社長のとった行動は、驚くべきものだった。なんと、 A店の周辺にある中古レコード店にかたっぱしから電話をかけ、こう言ったのだ。「実はA店が、なかなか代金を払ってくれないのです。もしA店と付き合いがあるなら、店主を説得してくれませんか?」

この電話のおかげで、A店の未払いの件は、いっぺんに市内全ての中古レコード店の知るところとなり、その噂はレコード店回りのお客さんの耳にまで入るようになってしまった。 これには、さすがのA店も参ってしまった。そしてしぶしぶながら全額支払いに応じたのである。

  このケースでは、T社が隠すことなく、広く周囲の中古レコード店を巻き込んだことが解決につながった。 ところで、読者の中には、 取引相手のことは公にすべきではない、という変な固定観念を持ってる人もいるかもしれない。しかし、こういう相手の場合は秘匿する必要はまったくない。 個人情報もクソもない、悪いのは向こうなのだから、何も恐れる必要はない。

❹悪質なお客の勤務先に電話を掛け、問題の解決を図った店主の話。
相手の勤務先に電話したケースもある。市内の中古レコード店のE店では、お金の持ち合わせのないお客に対し、店が 取り置きをしてあげていた。もちろん取り置きする以上は、後でちゃんと購入してもらえないと困る。ところがこの取り置きレコードについて、店主を悩ます問題が発生していた。

それは、ある常連客F氏の取り置き分が、だんだん溜まってきたことだ。お金ができたときに、この中から適当に購入してくれればいいのだが、なかなかそうしてもらえず、取り置き分は増える一方。とうとうダンボール箱二つ分にもなってしまった。客にとっては、欲しいものをとりあえず確保できるから、有難いサービスではある。しかし店としては、本当にちゃんと購入してくれるかどうかの不安がある。 もしも購入してもらえないのなら、店にとっては大きな損失。他の欲しいお客に、サッサと売ってしまったほうがずっといいのだ。

そんなある日、そのE店から私の方に相談があった。問題のお客F氏は、H銀行に勤めている人だという。そこで私は、 勤務先がわかっているのなら、電話を掛けてこちらの状況を説明されたらいかがですか、とアドバイスした。

E店の店主は、さっそくそのH銀行に電話を掛けてみた。すると即座に、F氏の上司という人がふたり、菓子折りもってやってきて、丁重に謝罪していった。 E店主は驚いた。何か月も頭を悩ました問題が、たった一本の電話であっという間に解決したからだ。こんなに簡単に解決するなら、もっと早くやっていればよかったと、すこぶる上機嫌だった。

以上あげた二つの成功事例は、どちらも電話で相手の関係者に電話することで、すぐに問題解決したパターンだ。 相手が関係するあらゆるところに連絡するのは、金銭トラブル対策の常套手段だ。 その効果は抜群で、一発で問題が解決することもある。ただし、連絡先を調査しなければいけないこともあることから、手間暇がかかることも。(※悪質な業者が相手なら、法務局へ行って法人登記簿謄本を取ることが基本になる。最近はオンラインでも取れるようだ)

ここまでの事例で言えることは、悪い相手に対し遠慮や手加減は無用だということだ。そして、泣き寝入りは絶対にダメ。泣き寝入りは返って相手につけこまれ、余計ひどい事になりかねない。「倍返し」という言葉があるが、二倍、三倍に相手を叩きのめすぐらいがちょうどよい。

❺万引き犯の名前を広めて撃退した、当店のケース。
さて、当店で起きた万引き事件を起こしたK氏のことについて書く。K氏は50代後半のジャズのなじみ客。札幌の中古レコード業界ではわりと知られた存在だった。当店でも世間話をよくしていた。

ところがあるとき、K氏がきた翌日に、必ず高いレコードがなくなっているということに気が付いた。観察しても、万引きの瞬間の目撃ができなかったものの、動きがどうもあやしいなと思っていた矢先、他店の店主から有力な情報が入った。その話の内容は決定的で、疑う余地はなかった。K氏の万引きを確信した私は、その日のうちに調べた番号に電話をかけ、出入り禁止の旨を言い渡した。

まあ、普通は出入り禁止処分でオシマイだ。私もこれ以上のこと、盗まれたレコードを取り戻すとか、損害賠償を請求するなどはまったく考えなかった。面倒なことはもうたくさん。いやなことは一日も早く忘れてしまいたい気分でいっぱいだった。

ところがである、この事件にはまだ続きがあった。 なんと、K氏がその後、他店で万引きを繰り返しているという情報が入ってきた。 被害にあっている店主は気が弱く、万引きに気づいていながら、なかなか本人に告げることができず悩んでいる、というのだ。おまけに、その店から盗んだレコードを別の店に転売。気づいた店主は転売先に電話を掛け、何とか返してもらったのだという。

悪いことは拡散する。 私は、事件についてあまり人に言わずにいたため、万引きが他店にまで拡散してしまったのである。 私は責任を痛感した。他店のことまで気が回らなかったのだ。 悪事は、最初の小さな段階でピシャリと止める必要がある。これが原則だ。いったん暴走しだすと、歯止めをかけるのは大変だ。アリの一穴が、巨大ダムの決壊にまで繋がっていく。

私には、無軌道な暴走しているK氏を止める責任があった。もう、黙っているわけにはいかない。 私は業界全体に話を広めるため、同業の店や常連客に積極的にどんどん話すようにした。K氏の名前、年齢、顔つき、服装、事件の経緯などこと細かくだ。

その効果は、テキメンだった。ネライはズバリ的中だ。 たちまち、市内の中古レコード各店で、予想以上の大きな噂となった。当然ながらそれ以降、K氏は二度と再び市内の中古レコード店には出入り出来ない身となった。 私のミスから他店に拡散、業界全体を巻き込んだ万引き事件だったが、最終的には犯人を完全に抑え込むことに成功。ようやく終わりを迎えたのである。

名前を出すことによる抑止効果はすごかった。もちろん、これは劇薬だ。使い方を一歩間違えると、取り返しのつかないことになる。 名前を出すときは、慎重のうえにも慎重でなければいけない。 今回は、K氏をレコード業界から締め出すことが目的だ。勤務先や家庭に言うのはやりすぎになる。

❻自分のことは、自分で始末をつけるべし。
ところで最近の人は、そんなことまで本当にやっていいのかと不安に思うようだ。私の周囲にも、そこまでしなくても‥と言う人も何人かいた。 だが、そういう一見「いい人」「常識人」に限って、いざ自分が被害にあうと、どうしていいかわからずオロオロする。結局こちらに泣きついてくる。いい人ぶりたいのは人情としてわかるが、自分のことは自分で始末をつけられないのでは、困ったものだ。何があってもいいように、日頃からしっかり考えておく。それが責任ある社会人というものではないか。

繰り返しになるが、大事なことは「自分の身は自分で護る」「絶対に泣き寝入りはしない」そして「業界全体についても公的な責任を持つ」そういういう気概がない人は、自営業はやってはいけない。

ところで、なぜ警察に相談しないのか、という疑問があるかもしれない。これについては当ブログでもさんざん書いてきたが、 万引きなどの軽い犯罪については、警察はあまり熱心に動いてはくれない。あてにするとバカを見るのである。警察はそもそも凶悪犯罪、大きな事件しか真剣に捜査しない。小さなことには、そもそも興味がないのである。だからこそ、店主に限らず自衛手段は自分で考えるしかないのである。(了)


次回以降の掲載予定!

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※以上、順不同。月1~2回の更新です。

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