中古レコード店店長の
経営ブログ

中古レコード、CDの買取や販売について、また日々の経営について、考えたこと、伝えたいこと、などいろいろ書いていきます。月に1~2回、更新していく予定です。

カスハラなんて関係ない! 中古レコード店店主は、なぜこんなにふてぶてしいのか!

更 新:2025-01-18
テーマ:店主、自営業者、サラリーマン

中古レコード店の店主は、癖が強くてふてぶてしいと思われている。では、なぜそうなのか。なぜ、普通のサラリーマンのようなタイプの店主は少ないのか。多くのお客さんの疑問を、わかりやすく解説する。


<目次>
❶古本屋で目撃したカスハラ。
❷弱い店主は、狙われやすい。
❸店主の、逆カスハラに要注意!
❹自営業者とサラリーマンは、何が違うのか。
❺自営業者は、強くなければ生きていけない。
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❶古本屋で目撃したカスハラ。

最近できた言葉で「カスタマー・ハラスメント」(カスハラ)というのがある。お客が店の人に威圧的な言動をとる迷惑行為のことだ。 かつて、わたしは古本屋でひどいカスハラを目撃したことがある。

そこは、おばあさんが一人で細々とやっている、マンガ中心の小さな古本屋だった。 男が2人入ってきた。30代ぐらいで半袖のガラシャツ姿、ちょっと悪そうな感じだ。 男たちは漫画のセットを棚から取り出し、「コレ、もっと安くならないかい?」と、大きな声で言った。6500円の漫画セットを4000円にしてくれ、というのだ。 昔から個人の小さな古本屋では、こうした値引き交渉は珍しいことではない。しかし、6500円を4000円にしろとは、ずいぶんひどいはなしだ。おばあさん店主はすぐに断ったが、相手は簡単にあきらめる様子ではない。ハナから、店主をバカにしているのだ。

男たちは「ねェ~、4000円にしてよ~。ほら~っ!ほら~っ!」と、まるでイヌか何かに言ってるような口ぶりで、執拗に店主を追いたてる。おばあさんは手を大きく振りながら必死に断るが、相手はなかなかうんと言わない。押し問答が何度か続いた。さすがに店主が気の毒に思ったわたしは、何か言ってやろうかどうしようかと考えていた矢先、男たちはようやく諦めたのか、そのまま買わずに帰っていった。

❷弱い人は、狙われやすい。

当時は 「カスハラ」 という言葉はなかったが、あれはまさしくカスハラだ。 弱そうな店主は、ガラの悪いお客から狙われやすい。とくに危ないのは、女性や高齢者の店主、気の弱そうな店主たちだ。 中古業界に限らず、飲食店などでも女性の店主が少ないのは、悪いお客に対処できないからという事情がある。

このカスハラを目撃して以降、 店主というものは、強くなければいけないと、つくづく思わされた。

実は、人間的に弱い人は経営的にも弱い。 その結果として、時代が厳しくなった現在は百戦錬磨のコワモテ店主しか残っていないというのが実情だ。

❸店主の、逆カスハラに要注意!

ところで、ご存知のように、 中古業界はカスハラどころか、反対に店主がお客を威圧する数少ない業界だ。 まさに、逆カスハラとでもいうべきか。

そもそもカスハラの多くは、弱い立場の従業員に対するものがほとんどだ。その点、中古レコード店の店主は、小さくとも一国一城の主。若いアルバイトとはわけが違う。

とくにコワモテ系の店主の振る舞いは、現代の社会常識を大きく逸脱するものだ。嫌いなお客はにらみつける、文句を言われると逆上し、すぐに出禁を言い渡したり、怒鳴りつけたりする。そんなことは日常茶飯事だ。(※店主がお客を殴ったという話はまだ聞いたことがないから、ご安心下さい)

わたしも、他店でひどい目に遭ったお客からグチを聞かされることはよくある。お客のほうも、ちょっとしたトラウマになっているのかもしれない。こういうお客はかなりの数にのぼると思う。

横柄でコワモテなタイプでも、最恐クラスの店主は、自分の非を認めることは一切ない。たとえ、お客が購入したレコードにキズがあって返品したくても「買う時に、ちゃんと確認しないほうが悪い!」と言って、取り合うことはない。 文句を言うと、雷を落とされるか出禁になる恐れもある。ケンカする覚悟がないのなら、おとなしく引き下がるしかない。

ずいぶんと、悪口を書いてしまった。だが、横柄な店に行くなというのではない。初めての中古レコード店に出入りするするなら、しっかり調べてから行った方がいいし、どうせなら、店主とうまく付き合ってほしい、と言っている。

実は、横柄で口の悪い店主ほど、中身はしっかりしているし、レコードにも詳しく、そのジャンルでは権威の人が多い。口が悪いのは正直なゆえで、その分信頼できると考えていい。「買う時にちゃんと自分で確認しろ!」と言うのも、その店主なりに筋が通っているのだ。

反対に、一見して人がよさそうに見える 軟弱タイプの店主 は、どうだろうか。実はこのタイプも別の意味で注意が必要だ。 この手の人で、何事にもだらしがなく、いつも調子のいいことばかり言うタイプは、嘘つきであることが多いのだ。(※売れてもいないのに、さも売れているかのような見栄を張る人は怪しい) 金銭トラブルがあるのは、この手の店主が多い。こういう店にモノを売ったり委託に出したりすることは、危険だからやめたほうがいい。

コワモテな店主はお客には厳しいが自分にも厳しく、金銭的にもしっかりしている。最初はとっつきにくいかもしれないが、ちゃんと店主の顔を立てながら上手く付き合っていければ、これほど強い味方はない。こういう店主こそぜひ活用して、自分のプラスにしていきたいものだ。

❹自営業者とサラリーマンは、何が違うのか。

中古レコード店の店主に限らず、自営業者は変わり者だと言われる。 自己中心的でこだわりが強いこと。また、短気ですぐ怒る反面、面の皮が厚く、多少のことには動じないふてぶてしさがあるということが、その理由にあげられる。こういう人間がどうして出来上がったのかと、サラリーマン諸氏は、不思議に思うかもしれない。

前に述べたかもしれないが、 自営業者とサラーマンとでは、生きる姿勢や考え方、すべてが根本的に違う。人種が違うと言ってもいいと思う。

よく自営業者を評するときに、サラリーマンが自分のモノサシで測って、ヤレ何だの、おかしいだのというのを聞くことがあるが、こういう論は見当違いだと言いたい。そもそも 「サラリーマンの常識」と「自営業者の常識」はかなり違っている。 世間の人達はそういうことが分かっていないから、自営業者のことがいつまでたっても理解できないのだ。

では、自営業者とは、そもそも何者なのか。サラリーマンとは根本的にどこがどう違うのか。

決定的に違う点は、自営業者は闘う存在だということだ。とくに、小さな自営業者は、小さいながらも、大きな世間を相手に戦いを挑んでいくゲリラのようなものだと思えばいい。 相撲でいえば、 舞の海。小さいながらも、ありとあらゆる手を駆使して闘っていくイメージだ。

サラリーマンの場合は、会社というカゴの中でちゃんと管理されている。(失礼な言い方になるが、飼育されていると言ってもいい)闘う必要はないし、下手に闘うと村八分にされてしまう。 サラリーマンにとっての大事なことは、闘うことではなく、カゴの中でうまくやることだ。 スティーブ・ジョブズや、イーロン・マスクのような、特別な活躍は必要ではないし、期待されてもいない。(※会社は、口では活躍を期待しているなどというが、真に受けてはいけない)

ただ、カゴの中の決りを守り、ケンカせず、与えられた仕事をそこそこ無難にこなしていければそれでいいという存在だ。それで身分は保証され食うに困ることはない。みな仲良く、普通が一番という世界だ。

(※少数派だが、闘うサラリーマンもいる。そういう人はカゴの中で闘いながら自分のポジションを作り出す有能な人だ。会社では人材と呼ばれ、リーダーとして活躍する。サラリーマンでありながらカゴの外にもしっかり目を向けている。 そういうところは自営業者的でもあり、のちに自営業に転身して大きな成功をおさめる人もいる。だが、そんな人は一握りだ)

  一方の自営業者は、野性の狼だ。何をやるのもすべては自分の判断。自分で考えたことを自分で実行し、その責任は自分で負う。完全自己完結型の人生で、自分の身は自分で護るのは当たり前。状況に応じ、ときには闘うことで活路を開く。

これが自営業者の本質だ。この覚悟がない人に自営業はやってほしくない。食っていけるかどうかはすべて自分の頭と腕にかかっている。運のさしはさむ余地はなく、実力がすべてだ。(※これはサラリーマンも同じだが、実力の中身はちょっと違う)

➎自営業者は、強くふてぶてしくなければ生きていけない。

自営業者に、大きな負けは許されない。多少の負けはいいが、あとで挽回できなければいけない。ときには逆境の中を体を張ってでも突き進む必要もあるし、他人から悪く言われることもある。ふてぶてしく見えるぐらいにタフでなければやっていけない。

理想の自営業者の姿とは、叩かれても叩かれても起き上がってくる人間だと、わたしは思っている。 非力で不器用な人間が、失敗しても失敗しても必ず起き上がり、食らいついて最後に逆転する。どんな逆境のなかでも、あらゆる手段を尽くして、何とかして勝利する。何の取柄もない凡人が、こうして少しずつ道を開いていく。こういう人が、本物の自営業者なのだと思っている。

人は、多くのピンチを切り抜けていくたびに、間違いなくバージョンアップする。キズを負いながらも、また一つ強くなる。そうして、いつのまにか面の皮も厚くなり、いやがおうでもふてぶてしくなっていく。

自営業者、特に中古店の経営者は、総じて荒っぽく、一方、サラリーマンは細かいのが特徴だ。(※これについては、またの機会に述べていきたい) なにか常識を逸脱したかのような印象がある中古レコード店の店主たちだが、そもそも店主という人種とはそういうものであり、サラリーマンとは違う世界を懸命に生きているのだ。(了)


次回以降の掲載予定!

■転んでもタダでは起きるな! ふてぶてしさをどう身に着けるか。
■当店のレコード棚は、なぜ縦型なのか?なぜ平台ではないのか。
■勝手な思い込みが店をダメにする。科学的経営をどう進めるか。
■店主の引き際はどうあるべきか。引き際の正しい心得について。
■ネット販売をやらず、当店はどうやって中古レコード店の経営ができたのか。

※以上、順不同。月1回程度の更新です。
※最近は多忙の上、体調不良も重なり、あまりうまく更新ができていません。今年の更新は、ややスローペースになるかもしれません。ご承知おきください。

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