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中古レコードの「針飛び」は、こうして防ぐ!ーその②、どんなキズでも修繕できる
更 新:2021-11-30
テーマ:聴き方・選び方・買い方
危ないキズをどう見わけ、どう修繕するか
■日本人に多い、キズアレルギー
ちょっとでもキズがあるとダメという人がいる。
誰だってキズはないほうがいいとは思うが、あまりにも極端な人を見ると、やはり閉口する。
店としては、やや傷アリだが聴くのには問題がないということで、かなり値を下げて、バランスを取っているつもりだが、こういう人には全く通用しないので、困ってしまう。
(多分、日本全国どの店でも同じだと思う)
そういうお客さんは、検盤でレコードに小さなキズを見つけるやいなや、たちまち顔をくもらせ、「あああ・・」とため息をつくのが常である。
しかし、ラベルには「Aマイナス」とはっきり表示してあり、多少の痛みがあることが最初からわかっているはずで、検盤して初めてわかったかのような態度は、理屈にあわず、腑に落ちない。
こちらも負けじと「最初から傷アリということで出してますからね。Aマイナスの表記だから、いいんです。これで正しいんですよ。」とわざと念押ししてみるが、そのお客さんは暗い表情のまま、「キズが・・」と小さくつぶやき、レコードを奥の棚にもどすのである。
・・・・・
日本人は、元来神経質な国民性で、こういう「キズアレルギー」、ともいうべき人が大勢いる。
だから店は、クレームやトラブルに対処しなくてはいけなかったり、チェックや梱包など、仕事の作業量もそれだけ増えるわけだから、大変である。
もっとも、こういう性質のおかげで、日本には、茶の湯や浮世絵、着物、陶芸、能や歌舞伎など、さまざまな独自の文化が発展してきたこともまた事実である。
そして今、
日本の中古レコードの「帯」もまた国際的な人気を呼んで、外国人が爆買いする状況を生んでいるから、店にとっては少しいい状況になってきているのは、皮肉なことだ。
残念ながら、日本の(特に帯付き)中古レコードは、海外流失ということもあり、絶対量は段々減少し、おそらく将来的には、日本の市場からなくなっていく運命にある。
(明治期、日本の浮世絵は欧米人に買われ、大量に海外へ流出した!)
だから、多少のキズは修繕しながら、聴けるものは聴いていったほうがいい。
■危ないキズの見分け方
盤のキズにはさまざまなものがあり、すべてが危険なわけではなく、針飛びするのは、あくまで一部のキズにすぎない。
キズを、本当にダメかもしれないもの、修繕して聴けるようになるもの、キズのように見えても実際には全く問題のないもの、と正しく分類できれば、中級以上のコレクターといってもいい。
まずは、キズの見方を覚え、危ないキズについては、正しい修繕方法をマスターしていけばいいと思う。
本当に危険なのは、深いキズだ。(レコード針で強くひっかいたキズが多い)
たとえ短くても、鋭く深いキズは針飛びのおそれがあるから、検盤のときは、見逃さないようにしたい。
逆に、いくら長くてかっこ悪いキズでも、浅ければほとんど問題はない。(当店ではAマイナス~Bプラスで表示)
人間は見た目でだまされることが多いから、長さや太さでごまかされないようにしてほしい。
キズの深いさは、ただ見ただけではわかりにくいので、指で触った感触で判断しなければいけない。
前回の記事でも述べたが、深いキズは指の腹で触るとザラザラ、チクチクとしたひっかかるような違和感があるが、ツルツルして違和感がなければ、ほとんど問題はない。
だから検盤のとき、これはどうかな?と思ったら、店主に言って触らせてもらったほうがいい。
■爪(ツメ)キズは針飛びしない
レコード盤には指のツメでひっかいたキズもよく見かける。
爪キズは太く白っぽく見えるので、すぐにわかるが、浅いので飛ぶ心配はほとんどない。
ただ、このキズは目立つので、印象は良いものではない。
当店では、Aマイナスの評価にしているが、できればこういうものはあまり気にしてほしくないというのが店としての本音である。
例えば、曲がったキュウリというのは、中身に全く問題がなくても、市場に出回ることなく廃棄されていく。
同様に、爪キズのレコードも、問題なく聴けるにもかかわらず、過度に値下げしなければいけなかったり、売れ残って廃棄処分になったりで、実にもったいないことである。
■キズの修繕方法
いったんついたキズはなくすことはできないが、深いキズでも、適切な処置を施せば大幅に針飛びリスクを軽減できる。
一つは、キズの箇所をティッシュで強くこすると、凹凸がなだらかになって、少しは良くなる。
もう一つは、爪楊枝(つまようじ)を使い、レコードの溝に沿って(キズに沿うのではない)やさしくなでるようにこする、という方法がある。(あまり強くやると溝が痛む)
慣れてくると、意外に速くできるし、実に簡単だ。
爪楊枝に関しては、エコストアレコード他、色々なサイトに詳しく紹介されているのでぜひ参考にし、習得されるといい。
(ベテランにもなると、なおせないキズはない!と豪語する人もたくさんいる。未経験の人もがんばってほしい。)
■針飛びのメカニズム
針飛びのメカニズムは簡単だ。
例えば、降り積もった雪を1本かいたとき、ショベルの通った道の両側に雪の盛り上がった部分ができる。
この盛り上がりの部分、凸の部分にレコード針が引っ掛かることが、飛ぶ原因になる。
だから、そこをなだらかにし、溝に針を通しやすくしていけばいい。
(雪のない地方の人、わかりますか?)
爪楊枝を使う、というと気の弱い人だと、ショックで思考停止になりそうだが、いったん慣れてしまうと、こんな便利なことはない。
最初は、多少失敗はあっても、必ずや自分のレコードライフの充実につながるはずだ。
まずはトライしてみよう。
■針飛びするダストは水で洗って取り除く
針飛びの原因はキズだけではない。
レコードの溝の奥には、長年たまった、ほこりや汚れ、カビなど(ダスト)が詰まり、固くこびり付いていて、チリノイズが出たり、ひどい時は針飛びしたりもする。
一見、きれいで何でもないように見えるレコードが針飛びするのは、これが原因だ。
知らずにいると、キズもないのになぜ針が飛ぶのかわからず、無駄に頭を悩ますことになる。
ダストはまず水できれいに洗浄するのが基本だ。
詳しくは、次回予定の「中古レコードのノイズは、こうして取る」で、述べるのでお読み頂きたいと思う。
■ニキビと盤反りについて
ニキビは、(正式名称不明)工場での製造過程でできた、盤面にある凸状のもので、古い輸入盤に多い。
ひどい場合は針飛びの原因となるが、針圧をかければ、ほぼ大丈夫だ。
ただ針がそこを通過するときに、ボコッとノイズが発生し、4~5回転はそれを我慢しなければいけない。
盤反りは見た目が悪いのできらわれるが、大きなウェーヴの反りは、針圧をかければほとんど問題ないといっていい。
危ないのは、小さくて目立たなくとも鋭い反りのほうで、圧をかけてもダメな場合もあるから要注意だ。
■まとめ
中古品というのは、傷んでいて当たり前の商品である。
もちろん店が全商品きれいに手入れして、店頭に出せればいいのかもしれないが、そんなことは不可能だ。
一部の高価格商品については、ある程度そうしているが、それ以上の規模でやるとなると、
現在の販売価格では、とてもやっていけないということになってしまう。
中古品の魅力はなんといっても「安さ」だ。
店が手間暇かけて、手入れしたとしても、その分価格があがったのでは、そもそも意味がない。
お客さんが各自、レコードのキズ修理技術を持ち、針飛びせずに聴けるのなら、それが一番いい。
(※商売の原則、常識として
手間暇かけて作業したり、いろいろなサービスを付け加えたりすると、当然その分レコード価格に転嫁され、高くなっていく。
このへんの詳しい話は、またの機会にゆずる。)
■次回以降の掲載予定
■中古レコードのノイズは、水で洗って取る! (12月上旬予定)
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以上、月二回更新予定
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