中古レコード店店長の
経営ブログ

中古レコード、CDの買取や販売について、また日々の経営について、考えたこと、伝えたいこと、などいろいろ書いていきます。月に1~2回、更新していく予定です。

出張買取は、交渉力が決めて! 交渉力を強化するにはどうしたらよいか!

更 新:2026-05-30
テーマ:中古レコード店の経営

繁盛する中古レコード店を作るには強い交渉力が欠かせない。今回は出張買取で必要な交渉力をどう強化していくか、その方法について解説したい。


<目次>
❶繁盛店は宣伝力と交渉力を兼ね備えている。
❷出張買取の成否が、経営を大きく左右する!
❸交渉力を強化しなければ、いい店は創れない!
❹成功率が飛躍的に高くなる交渉のやり方。
❺なぜ強気でなければいけないか。
❻必殺!空振り防止法のススメ。
❼電話対応の重要性。
❽出張買取で、お客とけんかになった!
❾まとめ。
___________


❶繁盛店宣伝力と交渉力を兼ね備えている。

新しいモノがどんどん入っている中古レコード店は、間違いなく繁盛店だ。当然、買い入れに力を入れている。逆に、ダメな店主はケチケチだ。ろくに宣伝もしないから、いい買い入れなどあるわけない。 結局、金を出し惜しみする人には福は来ない。ケチケチするのはいいことだと信じているから、始末に悪い。(※倹約家とケチはまったく違う。 ちゃんとした計算ができる人が倹約家。できない人がケチだ。多くの優良店の店主は倹約家である。)

繁盛店のやり方は、仕入れを増やすために、広告にしっかりお金をかける。今ならネット広告だ。また、SNSで拡散戦術をとるのも有効だ。広告とSNS。両方やるのが一番いい。 このぐらい金をかければリターンはこうと、先が読めるのが能力の高い店主である。 将棋の藤井聡太 じゃないが、こういう店主は頭の中にカーナビみたいのがあり、こうすればこうとわかっている。買取不足で困っている店主は、繁盛店のやり方を大いに学ぶべきだろう。

仕入を増やすためには、交渉力も強化する必要がある。出張買取するには交渉が必要だからだ。

わかりやすくいうと、まず、 宣伝をすれば、査定の依頼の電話がかかってくる。それを強い交渉力でゲットする。 釣りでいうと、いい場所で撒き餌をたくさんまいたら、魚がどんどん寄ってくる。それを交渉力でかたっぱしから釣り上げる。どんどん買うからどんどん売れる。これを繰り返せば、いやでも繁盛する。

宣伝力と交渉力は車の両輪。この両方をきちんと兼ね備えた店が、地域ナンバーワンの繁盛店だ。

❷出張買取の成否が、経営を大きく左右する!

店に行くと、店主が買取している現場に出くわすことがあるだろう。中古レコード店のよくある風景だ。ただ、誤解のないように言っておくが、どの店も店内では交渉はしていない。お客と簡単なやり取りはするが、あれは交渉ではない。査定後にどうするかは、お客の自由に任せている。

今回のテーマである交渉とは、店買いではなく、出張買取での交渉のこと。 出張でお客の家に出向いてする買取と、店内でのそれとでは、同じ買取といっても中身が違う。出張では、数百枚から数千枚と大量になる場合が多く、本格的な買取交渉が展開される。出張買取でしっかり交渉して、いいモノをたくさん仕入れられるかどうか。それで、業績に大きな差がつくのである。

優良店では、年に何回かある大口の買い入れが、経営の大きな支えになる。 交渉力が弱いと仕入れ不足に陥り、いつかは経営不振で行き詰る。

買うお金がないからと言って、大口の買取はお断りという、情けない店も多い。後払いにしてくれだとか、分割払いにしてくれとかいう店も同様だ。 後払いの約束をしても、ちゃんと店主が払うとは限らず、トラブルになるケースも実に多いから、要注意だ。 優良店舗は、その場で現金払いが基本である。店によっては銀行振り込みもあるだろうが、一週間以上遅れるとか、分割だとかは一切ない。

話しを戻す。 6割の宣伝力と4割の交渉力が、この仕事を決定づける。 しっかりお金をかけて宣伝し、SNSの拡散戦略も頑張れば、交渉力はたいしたことなくても、最低限は確保できるかもしない。しかし、本当にいい買い入れは、交渉力がなければゲットできない。

釣りでいえば、せっかく大きな魚が針にかかったのに、釣り落とすということだ。せっかく投じた宣伝費をドブに捨てることになる。こんなことでは泣くに泣けない。

(※私はたった一人の経営だが、宣伝広告費は、同じ規模の店舗の宣伝費の平均が年間30万ぐらいだった時代に、最大100万以上かけていた。まだ、交渉力が弱かったときで、宣伝力に頼ってやっていた。この金額は一人店舗では道内最大だったと思う)

❸交渉力を強化しなければ、いい店は創れない。

以前、他のサイトで、経営は店主の人柄できまる、という主張を見たことがある。まったくのピント外れだ。 人柄やコミュニケーション能力は関係ない。レコードの知識のあるなしも同じこと。お客の会話を聞いていると、レコードの知識があるから開業できると思っている人が実に多い。とんでもない勘違いだ。

知識を気にする人が多いが、レコードの知識なんか、後からいくらでも何とかなるのである。 開業当初はまったくズブの素人で、知識ゼロだった私がそういうのだから間違いない。ただ、交渉力のほうはそう簡単ではない。この業界で本当に生き残っているのは、宣伝に力を入れ、交渉力に磨きをかけた人たちだけだ。

交渉力、買い入れ金額、売り上げ金額、所得、これらはすべて比例する。 交渉は真剣勝負。この道でやっていくなら、失敗に失敗を重ね、傷だらけになり、泥にまみれ、はいつくばってでも、 自分独自の交渉ノウハウを磨いていくしかない。そういう人が、この業界で生き残っていけるのだ。今回はこのことを声を大にして言いたい。

(※自営業者とは、自らの足で立つ人のことである。 ちょっと悪口言われたぐらいで、しょげかえるようなメンタルでは話にならない。私も最初は弱かったが、たたかれているうちに、免疫ができてくる。これは交渉ノウハウ以前の問題)

❹成功率が飛躍的に高くなる交渉のやり方。

強い交渉をするための私流のやり方をご紹介したい。

①査定前は、絶対に交渉をまとめるぞ、という強い決意を持って家に行く。買い取るまで帰らないぞ、ぐらいの不退転の気持ちがあっていい。 執念とか根性ということ。もちろん、帰れと言われたら帰るしかないが、私はまだ言われたことはない。

②査定の計算をいきなりやるのではなく、まずはモノをざっと見て、会話しながら、概略的な説明を先にする。その説明に相手が納得しているのなら、最後に計算して査定の金額を出していく。

たとえば、 テレビショッピングというものがある。最初は相手方の人たちと会話しながら商品説明する段階があり、値段が出てくるのは最後だ。 つまり、値段を出す前には、必ず相手との様々なやり取りがあるのである。それをすっ飛ばして、いきなり金額を提示しても、なかなかうまくいかない。

よくある典型的な失敗は、ぶっきらぼうで無口な店主が、会話らしい会話もせず、自分勝手に査定をしてしまうことだ。そしていきなり、ハイいくらです、と、金額を言ってしまう。これだと、意外な数字が出てきて、びっくりする人がでてくる。失敗するのも無理はない。こういう、相手を全く無視したような査定は絶対やるべきではない。高倉健じゃあるまいし、ぶっきらぼうでうまくいくなら、苦労はしない。交渉とはそんなものではない。

大事なところだから、もう少し詳しく言う。 金額を計算するまでの段階が最も重要。モノをざっと見ながら、簡単な説明をする。このジャンルはだいたいいくらだとか、傷みぐあいで値段はこれだけ下がってしまうだとか。この段階での会話で概略を伝えて、おおよその金額のイメージをつかんでもらうのが、買取のコツなのだ。

説明の中身は、たとえば、こういうジャンルは、今はあまり聞く人がいないので、値がつかないですよ、とか、この辺のロックは今人気で、高く売れますね、といった具合だ。そして、全体をざっと見終わったら、「そうですね・・・売れるものが全体の半分ぐらいで、一枚あたり200~300円で買い取れそうですが、1000円以上のモノも何枚かあります。ただ、残りの半分ぐらいは売れないものなので、値はつきません」などといった調子だ。

ここまでの説明を、相手が納得しているかどうか、しっかり見極めよう。もし、いいようなら、「じゃあ、計算しますが、これでいいですね?」といって、了解を取ってしまう。ここが肝要。 了解を取れたら、いよいよ計算だ。了解済みなので、金額を出しても断られることはまずない。 (※断られるのは、その前の説明がダメだったということ)

このように、査定は、概略の説明と金額計算、というように、2段階で進めること。 説明には、少量なら5分~10分。大量なら、最低でも10~20分ぐらいはかけたほうがよい。説明で相手が難色を示すようなら、無理にそれ以上、進める必要はない。相手が納得いくまで何度でも説明をし直し、納得してもらうことだ。 しつこいようだが、この段階を飛ばして、いきなり査定の金額をだすから、えっ!そんなに安いのか!と驚かれてしまうのだ。こうなると、もう買取は難しくなる。値段に関しては、店主とお客の認識のギャップは結構あるもの。レコード店の常識は、お客にとっては常識ではない。

もう一つ、言っておきたいことがある。なぜモノを売ろうとしてるのか、向こうの事情も聞いておくべきだ。金がほしいのか、それとも引っ越すので、タダでもいいから処分したいのか、部屋が狭くなって片づけたいのか。売りたい動機は様々だ。 相手の事情を知ることで、買取は一気にやりやすくなる。タダでもいいと言ってる相手に、高値を付ける必要はないからだ。孫子の言葉に、相手を知り、己を知れば、百戦して危うからず、というのがある。相手を無視すれば、交渉は危うくなる。

さて、長々と述べてきたが、 交渉は序盤~中盤のやり取りで、ほぼ決まってしまうと言ってよい。 これは一般サラリーマンの営業でも同じこと。しっかり抑えておくべきだ。

③もしも、査定の金額を提示後に相手が難色を示した場合、どうやって挽回、逆転するか。完全に失敗のケースもあるが、何とかできる場合もある。 ここで、断られて簡単に引き下がるようではプロとは言えない。失敗の原因は、ほとんどが②の段階での失敗だ。だが逆転勝利の可能性もないではない。

では、どうするか。私なら、とりあえず、腕組みしながら「う~ん、では、いくらならいいのですか」と聞いてみる。または「もう少し、何とかしてもいいですが・・」といって、様子をうかがう。 要するに、時間を稼ぐのである。不思議なことに、人は時間をかけると態度が柔軟になるものだ。ここは、お互いにクールダウン。急いではいけない。

いったん、落ち着いたら「いや~、私もけっこう遠くから来ていましてね・・」とか「実は、この仕事は、あまり儲からないんですよね・・」などと、自分のことを言ってみる。そのうち向こうが「まあ、いいわ、しょうがない。あんたも大変なんだろうから、その値段で売るよ」と折れてくれ、逆転買取になる場合もよくあること。その金額で決まる場合もあるが、ちょっと妥協して、割り増しして決まる場合もある。

時を稼ぎながらの、駆け引きと妥協。柔軟な二枚腰の交渉術。

④他店よりも少し高めに値付けすること。 私は原則、相場の平均より明らかに低い値付けはしないようにしている。相手にもよるが、中の上から上の中ぐらいが多い。だからこそ、堂々と胸を張った強気の交渉ができるのである。

ダメな店はケチくさいものだ。相場よりうんと低いところで見積もっておいて、断られたらちょっと高くすればいいと考えている。だが、こんなことでうまくいくわけがない。 双方がウィンウィンになるような心がけが大事。だからこそ繁盛できるのだ。
(※相手がタダでもいから全部もっていってほしいとか、いくらでもいいとか言った場合はよくあること。私は、こういうときは、ありがとうございますといって遠慮なく持っていくことにしている。 その代わり、相手が全部もっていってくれと言っているのだから、いらないものも持っていく。そうすることがこの場合のウィンウィンということだ

❺なぜ強気でなければいけないか。

お客さんのほうが足を運んで店まで持ち込みしてくれるならいざしらず、 逆に、こちらからわざわざ出向くのが出張買取だ。しかも、お客の要請により、お金をかけて、である。当然ながら、買取の主導権は店側にあると考えてもいいはずだ。

出張には手間暇お金がかかるもの。例えば電気屋や水道屋だって、出張したら5000円ぐらいは当然取るだろう。 中古業者の場合も、同じである。ただ、買取で利益が出るなら、出張料は店が負担してもいいだろう、というだけのこと。手品師じゃあるまいし、出張料が消えてなくなるはずはないだろう。 そういう当たり前のことも理解できないのか、出張料のことがまったく頭にないお客が多すぎる。

以前は買取拒否された場合、お客に出張料を請求する業者は普通にいた。時間をかけ、ガソリン代もかけてわざわざ出向いたのに、拒否したお客には、出張料を払ってもらうぞ!っていうわけだ。まあ、気持ちはわかるが、私はしたことがない。

日本では、お客様は神様だと思っている人が多い。 しかし、買取では、店がお客にお金を払う、強い立場にある。とくに出張買取において、お客と業者の立場は完全に逆転する。そういうこともきちんと認識すべきだろう。(※これは先の②~④と矛盾するものではない)

❻必殺!空振り防止法のススメ。

それにしても、出張買取の空振りはなんとかして避けたいもの。そこで、当店では、ある時から空振り防止の対策をやるようになった。もし、業者の方でお困りの方がおられたら、お勧めしたい。

それは、 売るかどうかわからない、とりあえず見積もりだけ出したいというような家には、行かないということだ。わざわざ出張に行くというのは、買取するためであって、はっきりわからないような人の家に行くわけにはいかない。そのことを、相手にはしっかり釘をさしておく必要がある。つまり、 出張に行ったら、こちらが査定した金額で買取させてもらいますよ、ということを、あらかじめ、同意してもらえるなら行きますよ、ということだ。

言い方としては、 「レコードにはそれぞれ相場というものがあるので、相場の価格を参照しながらの買い取りなんですが、それでよければお伺いします。どうですか?」という感じだ。これで相手がどう反応するかで、こちらの対応が分かれる。厄介なお客は、電話の対応ですぐわかる。こちらも相手の返答に応じた対応をしなくてはいけない。

先のこちらの問いかけに対し、電話のお客がハイと言った場合は、そのまま出張に行ってもいい。こういう素直なお客は買取に行って失敗することは、まずない。むしろ、ただでもいいから、処分したいとか、引っ越すから、早く来てほしいだとか、本気で売りたい、または処分したいお客は、自分の事情をあれこれ言うものである。そういうお客の話はしっかり聞いておくと、買取がしやすくなる。(※あとで述べるが、私の経験では、何も言わない人のほうが厄介な場合が多い)

いくらで買ってもらえるんですか?と聞いてくる人も多い。それには、 まずは売りたいものの内容をできるだけ電話で聞いたうえで、「そのへんのジャンルは、だいたいこれぐらいが相場ですが。」と概略を伝え、「それでよければ伺いますが、どうしましょうか」と打診する。こうやって了解を取ってから出張に行くのが安全だ。

すぐには了解してくれないお客には、 「うちは、他店よりはちょっと高めにつけるようにしていますけど」と言って、納得してもらってから行くようにする。以上のお客は、ほぼ問題なく買取ができる。

問題は、査定してからでないと売るかどうかわからないというお客。お金にこだわる厄介なタイプだ。私は、そういうところには、無理に行く必要はないと思う。私の経験上、行っても無駄な場合が多い。こういう人には 「では、店まで持ってきていただけませんか?金額が気に入らなければ、持ち帰るのは自由ですから」と言う。なおもしつこく、ああだこうだ言うのであれば「出張するにも、出張料もかかります。売るかどうかわからないのに、行くことはできません」とダメ押しするしかない。

(※空振りは避けたいが、買取金額が大きくなりそうなら、話は別だ。売る側もいくつかの業者を比較して考えたいというのは普通のこと。こちらも空振り覚悟で行くしかない。私の場合は、5万円を超えそうな場合は、仕方がないものと考える)

また、出張に行くには量が少なすぎ、こっちが断っているのにもかかわらず、なおも買取に来てくれとしつこく言ってくるお客もいるが、これには、 「量が少ない場合は、お金は払えないんです。出張料がかかりますから」というと、向こうもあきらめる。

いまあげたようなお客でも、私も若いうちは積極的に行っていたが、がっかりするのがオチである。敬遠するのが正解だ。


❼電話対応の重要性。

以上からわかるように、 買取交渉は、電話が来た段階ですでに始まっていると言ってよい。 ここで、こちらが主導権をがっちり握ることができれば、すでに買取は成功したようなもの。 まさに、孫子の「戦わずして勝つ」である。

もう一つだけ、大事な点を付け加える。それは、 相手がなぜモノを処分したいのか、その理由を聞いておくということだ。引っ越しなのか、家の片づけなのか、お金が欲しいのか、捨てるのはもったいないから世の中の役立ててほしいということなのか。動機はさまざまだ。それがわかれば、こちらもそれに応じた査定をすればいい。

例えば、引っ越すので、タダでもいいから全部引き取ってほしいと言っているお客に、お金を払うのは筋違いだ。ただし、ただで持っていく代わりに、売れないもの、こっちが必要ないものまで、きちんと全部引き取ってあげるのは当然のこと。

❽出張買取で、お客とケンカになった!

実は以前にもちょっとだけ触れたことがあるのだが、私の実際の買取経験を一つ、ご紹介する。かなり前のことだが、 出張先のお客と口論、ケンカになってしまったことがあった。特殊なケースだが、買取交渉の要諦がわかると思う。

あるお宅に行き、レコードの買取が終わり、やれやれと外に出て帰ろうと乗ってきたバイクに積み込みしていたら、「コラッー!待てー!」と、大きな声が背中から聞こえた。 その家のオヤジが出てきて、呼び止められたのだ。なんだ、と思って振り返ると、カンカンに怒った顔の70歳ぐらいのオヤジが 「あまりにも安い!レコードを返せっ!」と言ってきたのである。

買取した時に対応してくれたのは、愛想のいい奥さんだった。なのに、なんだ、このオヤジは! 私は面食らい、混乱しそうな頭を何とか冷静に保ちながら、 「いや、これは適切な値段だし、もうすでに買い取ったものなので、いまさら返せと言われても困る」と言い返した。だが、オヤジは「いや、安いから他の業者を呼んで、値段を比較するんだ!返せ!」と聞き入れない。

これにはさすがの私もキレた。言っておくが、私はもともと温厚で我慢強い性格だ。キレることなどめったにない。 「お客さん!業者を呼んで比較するっていうのはね、たとえば、中古車とか、貴金属とか、レコードだって何十万のものとか、金額が張る場合でしょう!たったこれっぽっちのレコードで、比較するも何もないでしょう!」と声を荒げて言った。

オヤジはなおも、いや、比較するんだ!と意気込むも、こっちも負けるわけにはいかない。 「あのね、私はね、あなたがどうしても家まで来てほしいというから、たったこれだけのもののために、わざわざ遠方から来てあげたんですよ!私の立場はどうなるんですか!ええっ!!」  私は目を吊り上げ、思いっきり声を張り上げた。外は夜7時をとっくに回り、すでに暗かった。たぶん近所じゅうに二人の怒声が聞こえているに違いない。

そろそろ幕引きを図らなければいけない。何とか落としどころはないものか。私は怒鳴りながらも、頭の中では妥協点を探るべく、グルグル考えを巡らせていた。そしてついに、「分かりました!では、この部分はお返ししましょう!」と半分以上のレコードをさし出すと、さらに 「その代わり、こちらのシングル盤何枚かは、2000円で買い取らせてもらいますが、それでいいでしょう?」と言った。最後の妥協。奥の手だ。 すると、今まで色をなして怒っていたオヤジが、あっさりと「ああ、それでいいよ」と言って決着がついた。急に何かストンとはまったような、何とも不思議な感じだった。

なぜ、私はそれで妥協したか。 オヤジに返したレコードは、それほど値打ちのものはなく、無理に買い取る必要がなかったからだ。でもゲットしたシングル盤のほうは、わずか数枚だったものの、かなり珍しい貴重盤だったから、店としてはこれで十分すぎるぐらいだった。オヤジは機嫌がよくなったのか、日が暮れる夕闇の中、自分のことをあれこれ話し出した。まるで何事もなかったかのように。

大事なことをまとめておく。 まず、返す筋合いがないのに、簡単に返すべきではないということ。 この商談は、奥さんから買取した段階で、すでに成立済み。所有権はすでにこちらに移っている。つまり、後から返せと言われても、法律上、返す義務はない。(民法)こういう基本的なことを知らない店主もいるようだが、勉強不足だ。お客の言いなりではなく、筋を通す強い気持ちが大事だ。 同じく、こちらから出向いてきているのに、わずかな金額のことで、見積もり比較しようなどという理不尽なお客の態度に、不満を表明するのも当然。

さらに、 絶対絶命のピンチの中でも、なんとか落としどころを見つけ、妥協点を探りながら交渉努力をすることが大切だ。交渉が白熱しすぎると、つい、自分の立ち位置を忘れてしまいがちになる。 どん状況になっても、どこまでなら妥協できるか、たえず考えておかねばならない。

この例は、 強気だったからこそ、商談が逆転成立したいい見本だ。参考になれば幸いである。

(※私の長年の経験のなかで、お客の家で喧嘩になったのはこの家含めて、わずか2軒だけ。最近の若い人は驚かれるかもしれないが、出張トラブルがまだまだ多かったあの時代に、たった2件というのは、かなり少ないほうだと思う)

❾まとめ。

交渉は双方がウィンウィンになることが大事である。(※このハチャメチャに見える例も、最後はちゃんとウィンウィンになっている!)事実、私の今までの買取交渉のほとんどはそうなっている。当店が長年にわたって、同規模の他店と比較しても、かなりな買取量を確保できたのはそのおかげだと思っている。

最近では トランプ関税についての日米交渉がいい例だ。あの温厚な 赤沢大臣のやり方は、柔軟な中にも一歩も引かない不退転の強気を貫き、交渉の要素のすべてを駆使した、交渉の教科書のようなものだ。

次回も出張買取の続きをやりたい。主に「駆け引き」「妥協」「ウィンウィン」を中心テーマに、ほかの例をご紹介したい。(了)

次回以降の掲載予定!

■私の出張買取体験アレコレ! 出張買取の交渉はこうすべし。
■店内商品のフン詰まりに気をつけろ!店内価格の調整法。
■店主はサラリーマン勤めができないというのは本当か?店主の前歴あれこれ。
■市場調査をやらずに、開業するな!私の市場調査体験アレコレ。

※以上、順不同。月1回の更新予定。
※多忙につき、かなり久しぶりの更新になってしまいました。次回は6月末までにお届けする予定です。よろしくお願いします。

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