中古レコード店店長の
経営ブログ

中古レコード、CDの買取や販売について、また日々の経営について、考えたこと、伝えたいこと、などいろいろ書いていきます。月に1~2回、更新していく予定です。

常連さんは、特別に優遇されているのか?常連さんのメリットと責任とは?

更 新:2023-01-12
テーマ:中古レコード店の経営

昔からどの中古レコード店にもいた常連さん。その常連さんは特別に優遇されていると思われているようだが、本当の実態はどうなのか? またネット時代になり、経営環境の変化とともに常連さんの役割も終わったと言えるが、どういうことなのか。今回は、常連さんと店との関係について、詳しく解説する。

<目次>
❶「常連さん」とは、どういうお客さんのことを言うのか?
❷「常連さん」を優遇する店は、昔は多かった。
❸なぜ、今は優遇しなくなってきたのか?
❹「常連さん」が一杯やりながら中古レコードを選んでいる、スゴイ店が存在した!
❺ネット販売切り替えで、「常連さん」はもう要らない?
❻「売上が足りないから、少し買ってくれないか」と、店主に頼まれた「常連さん」がいた!
❼まとめ。「常連さん」が店を支え、助ける?
■次回以降の掲載予定!

___________________________________

❶「常連さん」とは、どういうお客さんのことを言うのか?
一般客にとっての素朴な疑問(疑念?)の一つに、「常連さんは、特別安くしてもらってるのだろうか?」というのがある。 「常連さん」はいつも店主と親しげに話をしているので、そう思われても不思議はない。 はたして、常連さんは「特別扱い」を受けているのか否か。今回は、これについてお答えしたい。

その前に、ひとつハッキリさせておきたい。 ここでいう「常連さん」と一般的な意味での「常連客」とは違うということだ。古書店や中古レコード店のお客さんは、どの店でも8割ぐらいが、リピーターで、これが広義の意味での常連客だ。 今回のテーマの「常連さん」とは、そういう一般的な常連客ではなく、店主と親しく世間話をしていたり、コーヒーを飲んでいるような、「馴染み客」のことを指している。その両者を区別して、話を進めたい。

昔は、どこの店にも決まった「常連さん」がおり、店主や他の常連さん同士の間でレコード談義に花を咲かることが、日常の光景だった。彼らにとって、店は買い物する場であると同時に、コミュニケーションの場でもあったのだ。 そこに集まる常連同士が情報交換をすることで知識も深まる。それが楽しくて、店に集まるのだ。ただし、今はネットの時代になり、「常連さん」は、かなり減っている。

❷「常連さん」を優遇する店は、昔は多かった。
かつて、個人店が常連客に値引きサービスをすることが当然のように思われていた時代が、確かにあった。

常連さんを優遇するか否かは、店によって随分違う。 一人で営業しているような個人色の強い店の場合、値段があってないようなところが以前は多かった。当然、親しい常連さんには安く販売する傾向が強かった。

当店は開業以来一貫して、値引き販売をしない方針を取っている。それでも「ちょっと安くならないか?」と聞いてくるお客さんはけっこういた。

あるとき、常連客の一人に値引きしてくれと言われたのでお断わりすると、「私は、常連客ではないと言うのですか!」と、大真面目な顔で言われ、ちょっと困ったことがある。 当店の営業方針をお伝えしたが、納得してもらうのにひと苦労だった。

❸なぜ、今は優遇しなくなってきたのか?
現在、そういう店の大部分が淘汰されてしまった。公平公正な値付けで、真っ当な営業をしている店のほうがやはり強い、ということが証明されたかたちだ。常連さんを特別扱いしているようでは、きちんとした店づくりができるわけがない。

常連さんがいるいないに関わらず、値段の面でお客さんを差別しない店が、圧倒多数の信用を得るのである。経営的には、少数の「常連さん」より大多数の一般客に焦点を当てていくほうがいいのである。

(※値引きする場合は、不公平にならないよう、ポイント制や金券の配布、いくら以上購入すれば何%割り引く、割引セールの実施など、 何らかの形で「制度化」することが大切である。店主の特定のお客さんに対する勝手気ままな値引きは、付いてる値段や店の信用を損なうのだ。)

❹「常連さん」が一杯やりながら中古レコードを選んでいる、スゴイ店が存在した!
常連さんについて、ある店で驚くべき光景を目にしたことがある。以前、たまたま用があって立ち寄ったB店での話だ。

まず、ビックリしたのは、店内が大勢の人でごった返していたこと。そして、常連さんと思われるお客さんがあちこちでワイワイやっていたことだ。ちょうど混みあう時間だったとはいえ、その賑わいぶりは半端なく、中古レコード店とは思えないほどだった。

だが何よりも驚いたのは、ボトル片手に一杯やっているお客さんがいたことだった。 (私の見間違いでなければ、確かに酒だった!)

出入り口付近にある大きなテーブルの席にそのお客さんはべったりと座り、飲みながら酔った目で手にしたレコードを眺めていた。テーブルの上には店が用意したお菓子もあった。

店内には冷蔵庫もあるし、酒も店がキープしていたのかもしれない。こうなると中古レコード店というより、居酒屋か喫茶店だ。「常連さん」をこのような形でもてなしていた店があったのだ。カルチャーショックだった・・。店内は静かにすべきものという、私の固定観念は見事にひっくり返され、すっかり考えさせられてしまった。

ところが、それからしばらくして事件が起きた。 B店が、ネット販売に切り替えたのだ。 大きなテーブルとイスは撤去され、オモテナシも一切なくなった。店の雰囲気はガラリと変わり、店主もすっかり冷淡になった。それからわずか1~2か月、あれほどいた常連さんは、ほとんど姿を消してしまった。

❺ネット販売切り替えで、「常連さん」はもう要らない?
店主にとって「常連さん」とは、どのような存在なのだろうか?誤解があるようだが、常連さんだからといって、特に買うわけではない。先のB店の例では、ネット販売には常連さんはいなくてもいいようにも見えるが、本当はどうなのだろうか?

店にとって、常連さんの話を聞くことによるメリットは、以前は確かに大きかった。ネットがなかった頃、生きた情報は常連さんのおかげで得られたからだ。 たとえば、当店でも、レコードの値付けの間違いを、お客さんから指摘を受けて適切に修正する、ということはよくあった。いろいろ店を回っているお客さんのほうが、詳しかったのだ。店主にとっては、そういうことが勉強にもなった。そんな時代があったのだ。

今、値段などの情報は、ネットを見れば誰でもわかる。人に聞く必要はない。 つまり、常連さんの情報源としての価値は失われたのだ。 ネット販売の時代になり、冷淡になった店主が増えてきたのはそういう事情がある。

先のB店は、常連さんの社交場になっていた。店主も嫌気がさしていたようだ。オモテナシが思ったほどの売り上げにつながらず、かえって他のお客さんからのクレームもあったと聞く。不満くすぶる店主は、ついにネット販売切り替えを決断。その流れで常連さんと縁を切ったのだろう。(※B店は、現在は営業していない)

❻「売り上げが足りないから、少し買ってくれないか」と、店主に頼まれた「常連さん」がいた!
今のケースと違う話をしよう。あるお客さんのところに親しくしているA店の店主から電話があった。 その店主は申し訳なさそうに「レコードを少し買ってくれないか」と頼んできた。最近売りげが悪く、このままだと家賃の支払いができないのだと言う。まさに崖っぷちの経営状態であることが、電話の向こうから伝わってきた。

その店主とは付き合いも長く、いろいろ世話にもなっていた。買ってほしいと頭を下げて頼まれれば、断るわけにはいかない。店主を助けるため、さっそくオリジナルを何枚かリストから選び、売り上げに協力したのだった。


経営危機にさいし、店主が直接電話で依頼するというのは、常連さんだからこそできることだ。(※ただし実際には「買ってほしい」という依頼よりも、「レコードを売ってもらえないか」とか「委託に出してもらえないか」というケースのほうが多いようだ。)

常連さんというのは、店の「親衛隊」のようなものかもしれない。店がピンチのときは、協力する。 もちろん、嫌なら断わるのも自由だが、今までのような付き合いはできなくなる。

❼まとめ。「常連さん」が店を支え、助ける?
昔ながらの、浪花節的なタイプの店は、常連さんを非常に大事にしている。先の例でもわかるように、こういう店では、常連さんとは持ちつ持たれつ、普段は特別な計らいをしてあげるにしても、いざとなれば、逆に常連さんが店に協力し、助けるのである。

私は、この種の店は一般客からの信用は得られないし、今は数が減ってきている、と先に述べた。だがそれを承知のうえでやるのであれば、こういう古いやり方でもいいと思うし、他人がとやかく言うことでもない。

私は、コンビニなどの合理的経営の影響を受け、この業界に参入してきた者である。浪花節とは無縁だ。常連さんの数も少ないほうだろう。(そもそもコンビニには、常連さんはいない)お客さんに助けてもらおうとか、何かを頼もう、と考えたことは一度もない。そもそもそういう発想もない。根が自力本願的だからである。

現代の経営にとって、自力本願的な厳しさ、緊張感の中に身を置くことは大切なことだ。自分を甘やかさない。常に背水の陣の中にいる自分を意識する。 それが、私が長年、店を続けてこられた理由の一つだと思っている。(了)


■次回以降の掲載予定!

■ただの飾りじゃないんだよ!壁にズラリと並ぶレコードは何のため? お客さんの知らない経営マル秘裏事情。

■中古レコード店の店主は、なぜマイペースなのか? 

■絶対に言ってはイケナイ! 中古レコード店を怒らせる禁句アレコレ。 マナー講座、復習編。

■追いかけた万引き犯が、もし車にひかれてしまったら! 店主に責任は有るのか否か?あの事件についてよ~く考える。


以上、順不同。月1~2回の掲載予定です!

過去の関連記事

営業時間

中古レコード・CD・DVD

音楽創庫タナカ

札幌市中央区南22条西9丁目1-38

買取番号 011-552-0090
営業時間 『お知らせ』欄をご確認ください。

市電『東屯田通』下車すぐ