中古レコード、CDの買取や販売について、また日々の経営について、考えたこと、伝えたいこと、などいろいろ書いていきます。月に1~2回、更新していく予定です。
壁面に並べて張り出している中古レコードはただの飾りではない!ではいったい、何のためにあるのか?
更 新:2023-02-04
テーマ:中古レコード店の経営
壁面に並べられているレコードは、買取や販売の促進のため、売り買いの好循環を作るためのものであって、ただの飾りではない。その考え方とメカニズムについて述べる。
<目次>
❶中古レコード店の壁面には、なぜレコードが並べられているのか?
❷壁面のレコードは、目先の利益のためにあるのではない。
❸当店の販売手法を大きく変えることになった、ある衝撃的な出来事!
❹壁面のレコードが、買取のお客さんを呼び寄せる!
❺壁面のレコードは、店の権威や信用を表すとともに、「客寄せパンダ」としての働きもしてくれる。
❻壁面のレコードが早く売れてしまうと、店主は困る?
❼まとめ 遠くのお客さんを「呼び込む力」をいかにして持つか?
★★次回以降の掲載予定!
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❶中古レコードの壁面には、なぜレコードが並べられているのか?
中古レコード店に行くと、中古レコードが壁面にジャケットが見えるようズラリ並べて張り出してあり、実に楽しい。思わず欲しくなるが高くて手が出ないことが多い。
中には
「非売品」と書かかれた中古レコードが含まれていることもあるが、これは欲しいと言っても簡単には売ってもらえない。
ところで壁面のレコードは、何のためにあるのだろう?売ることが目的なのか、ただの飾りなのか。それとも
店主が自慢したいということなのだろうか?
実を言うと、壁面のレコードは今いろいろ述べた理由で出ているわけではない。
店の本当の目的、ねらいは、別のところにある。
壁面のレコードには、店主の用意周到な営業的思惑、深い計算が隠されている。それは店の重要な営業戦略の一環であり、将来に向けてのより大きな利益確保への意図、思いが込められている。
❷壁面のレコードは、目先の利益のためにあるのではない!
壁面のレコードが、どうして将来的な利益につながるのだろうか? もし、売れたらその利益は、あくまでもその場限りのもの、つまり
目先の利益ということだ。ではこれが、将来的な、つまり
中長期的な利益になるというのは、どういうことなのか? 大変重要なポイントだが、これはかなり難しい問題だ。私自身も、気が付くまで何年もかかったのだから。
目先の利益のことはわかりやすい。子供でもわかる。
だが、中長期的な利益をどう出すかを考えていくことは、大人にとってもハードルが高く、難しい。その実現のためには大きな仕掛けが要る。つまり頭をうんと広げて、より大きな営業戦略を思い描く必要がある。それができる人は、本当の経営者なのだと思う。
では、壁面のレコードと中長期的な利益との関係について述べる前に、私のある苦い経験について話そう。
❸当店の販売手法を大きく変えるきっかけとなった、ある衝撃的な出来事!
当店が開業して何年かたったある日のこと。初めて店に来たお客さんが、ジャズのレコード棚を一通り見終わるとカウンターに来て
「イヤ~。お宅のジャズはずいぶん安いね~。実は500枚ほどジャズのレコードを買ってもらおうと持ってきたんだけど、こんなに安いんじゃね~。」と残念そうに言い、査定も取らずにそのまま帰ってしまったことがあった。これには私もただ呆然とするしかなかった。
逃がした魚は大きい。当店の安い販売価格を見ただけで、査定もせずに帰ってしまったのだから。これは、当店の営業方法がお客さんからダメの烙印を押されたかたちであり、当然ショックも大きかった。これは、何とかしなければいけなかった。
ちょっと弁解させてもらうが、
そのころの当店は、今とは違って薄利多売を営業の柱にしていた。そこそこ高めに積極的な買取をして、販売価格は他店よりも安めに値付けした。売れ残ったらさらに値下げして売りきるというふうだった。
当時は、このやり方で面白いように売れて、市内各店と比較しても業績はかなり良いほうで、すべてが順調だった。当然ながら、私はこれがベストなやり方だと信じて疑わなかった。
(※ただしこの売り方の問題点があった。いったん品薄状態に陥ると、棚が安い売れ残りのカスだけになってしまうことだった。そして、この出来事があったときはまさに最悪の状態だった)
❹壁面のレコードが、買取のお客さんを呼び寄せる!
この出来事は、明らかにこれまでの営業方法の限界に突き当たっていることを示していた。
だが、どうすればいいのか。何か方策はあるのだろうか。お客さんが帰った後、まだショックが残る頭のなかでしばらく考えた。そして、ふと壁面にレコードを並べることを思いついたのだ。だがそれをやることは、これまでの路線の大きな転換を意味する。勇気がいるが、転換の必要性も同時に理解していた。これは、私にとって大きなことだった。私は慎重に考えを整理すると思い切って決断した。ショックから数時間が経過していた。
壁面のレコードの活用は、新しい取り組みの大きな柱だ。
最初の大きな目的として、買取の促進がある。わかりやすく言うと、壁面にいいレコードがたくさん出ているほうが、店も活気づき、繁盛する。高価ないいレコードが壁に並んでいるのを見たお客さんは、自分もこの店で買取してもらおうと思う。簡単に言うと、いいレコードが、いいお客さんといい買取を呼び寄せるのである。
壁面のレコードは、
買取促進のための強力な仕掛けであり、武器、装置になり得るものだ。
言葉は悪いが、大きな買取を呼ぶためのエサのようなものだ、というとわかりやすいだろう。(※ただし、すべての店主がそう考えているとは思わない) なぜ非売品のレコードが店の壁にあるのか、その謎についてもご理解いただけたと思う。
❺壁面のレコードは、店の権威や信用を表すとともに、「客寄せパンダ」としての大きな働きもしてくれる。
壁面のレコードは、買取だけではなく、当然ながら販売にも力を発揮している。
ただし、壁のレコードそのものの売り上げが問題なのではない。ここは誤解されがちだが、
壁のレコードは、あくまで営業用のディスプレイとしての役目を果たしてくれればいいわけだから、売れなくてもいいのである。
これまた言葉が悪いが「客寄せパンダ」ということだ。パンダでお客さんを呼び込み、店全体の棚のなかからいろいろ買い物をしてもらうことが、店のねらいだ。したがって、壁のレコードには、買取と販売、両方の促進をはかる目的があるのである。
(※これは、スーパーのチラシに載った「特売品」と同じことで、仕入れの安い特売品は売れば売るほど赤字になるが、お客さんは何も特売品だけを買うわけではない。他に何千円も買い物してくれればいいのであって、「特売品」はあくまで客寄せの道具に過ぎない)
❻壁面のレコードが早く売れてしまうと、店主が困る?
ここで困ることは客寄せ用のパンダとして並べたレコードが、置いたその日のうちに売れてしまうことである。これには、ちょっとガッカリしてしまう。すぐに売れたのでは、パンダとしての役目を果たすことはできないのである。
パンダとしていい仕事をしてもらうには、多くのお客さんの目に触れるということが何といっても大切だ。だから、せめて1か月間ぐらいは置いておく必要があるのである。
あまり早く売れないように相場よりやや高めに値付けされることが多いが、油断してると即日売れてしまうような大失敗をやってしまう。
❼まとめ 遠くのお客さんを「呼び込む力」をいかにして持つか?
中古レコード商売というものは仕入れが大変だ。売り切って商品がなくなってしまえば後が続かなくて困ることになる。どうすれば長く安定的に営業を続けていけるかを、真剣に考える必要がある。そのための方策の一つが、壁面のレコードの活用である。
中古レコードを買い求めるお客さんは、かなり広範囲に点在している。だから、どうやったら遠方のお客さんにわざわざ来てもらえるかについて、知恵を絞らなくてはいけない。
お客さんというものは、何となく来るのではない。意識的に引っ張ってくるもの、あるいは呼び込むものだ。遠方のお客さんを「呼び込む力」「引く力」が強ければ強いほど、繁盛につながっていく。
うまくいかない店主ほど、この辺が決定的に弱い。お客さんを呼び込むための仕掛けも何も考えてない。誰か来ないかな~と、ただ指をくわえて待っているだけでは誰も来ない。
ついでながら言っておくと、
このような「仕掛け」や「装置」の役目を果たすものは、どんな商売にも必ずあるはずだ(※業種によって仕掛け、装置のあり方は様々である) もし、何かの商売をしている人が売り上げの調子がよくないと感じているなら、その装置があまり機能していないのではないかとも考えられるが、どうであろう。(了)
■次回以降の掲載予定!
■中古レコード店に無料のサービスなどあるわけない! 当店がサービスをほとんどしないわけ。
■営業時間だけが中古レコード店の仕事はではないんだよ!あまりにも知られていない、営業時間以外の仕事アレコレ。
■ネット販売をしてない当店が、こんなに長く経営を続けてこれたのは何故か?ネット販売の利点と大きな落とし穴。
■万引きの犯人を追いかけたら、車にひかれてしまった!店主に責任があるのか否か? あの事件につてよ~く考える。
※以上、順不同。月1~2回の更新予定です。
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