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クラシックの名曲名盤は自分で決める!ガイドブックに頼らない名盤収集術とは、何か?
更 新:2023-05-27
テーマ:聴き方・選び方・買い方
<目次>
❶クラシック初心者と中級者のレコードの買い方は、大きく異なる!
❷名盤ガイドブックのランキングは、気にするな!
❸クラシック入門者の正しい買い方、選び方。
❹中級者と入門者では、何が違うのか?
❺まとめ。何が名盤かは、自分で決めるべし!
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❶クラシック初心者と中級者のレコードの買い方は、大きく異なる!
クラシックを聴き始めの人が、レコードを選ぶさい、何をどう選んでいいのかがよくわからないようだ。例えば、ベートーベンの「運命」という有名な交響曲があるが、この曲は指揮者でいうと、フルトヴェングラー、カラヤン、ベーム、その他数多くの名盤がある。どの盤から買ってもよさそうなものだが、初心者はそういうわけにはいかないらしい。
初心者がクラシックレコードを買う場合、まず、ガイドブックを購入し、それに沿ってレコードを選ぶ人が多い。ただ、問題がある。初心者・入門者の場合、たまたま自分の持ってる名盤ガイドブックに、カラヤンが一番に推奨されていたら、それ以外のものは目に入らない。目当ての盤がなければ、何も買わずに帰ってしまう。
初心者お決まりの行動パターンだ。
ある程度はしかたがないとは思う。問題なのは、選び方が慎重で、買ってもせいぜい安い盤を1枚か2枚だけなので、店にはあまり歓迎されないことだ。『一見さんお断り』の店が存在するのは、そういう理由だ。そこを何とか乗り切る必要はあるだろう。(※店には『お断り』と書かれてはいないものの、店主の顔にそう書いてある場合も)
その点、中級者は大きく違う。聴いてない盤はとりあえず買ってみようという積極的な姿勢がある。とにかく枚数を買うし、選び方も速い。
(※一般的に、中級者はガイドブックを何冊も持っていて、よく勉強もしている)
あっという間に5枚も6枚も選ぶ。当たり外れがあっても、安い盤ならあまり気にしない。そういう貪欲な積極性が、自分の世界をさらに大きく広げていくことになる。1枚買うにもおっかなビックリの初心者とは、対照的だ。
余談になるが、中級者は中古レコード店にとっての最も良いお客さんであり、店の経営を支えている中心的な存在だ。(上級者になると、すでに持っているので、新たに買うレコードはあまりない)しかし、その中級者だって、最初は初心者だったわけだから、店は初心者・入門者を、ないがしろにすべきではない。
❷名盤ガイドブックのランキングは、気にするな!
ガイドブックの話に戻る。クラシックの名盤ガイドには、曲ごとに、著者が一番よいと思う盤と、それ以外の何枚かの推奨盤がいっしょに紹介されているというパターンが多い。
入門者はのほとんどは、その中で1番とされる盤だけを目当てに、店に探しに来る。
だが、音楽はスポーツとは違う。陸上の100メートル走じゃあるまいし、1位が良くて2位以下は全然ダメ、というものではない。
そもそもランキングなどというものは、選者によって全然違ってくるし、時代によってもかなり違う。
昔、あれほど評価された名盤が今はさっぱり、などというのはよくあること。
ランキングは、参考するのはよいが、絶対視はいけない。
納得ができない方は、実際にガイドブック(またはネット)を何冊か読んでみればよい。全部違うことが書いてある。極言すると、
本が10冊あれば、10通りの1番があるのである。
ガイドブックを1冊しか持たない初心者には、こう言っても理解できないだろう。最初は、誰もが井の中の蛙である。ただ、次のことは理解してほしい。
本に名前が載ってるほどの人は、いずれも世界の名演奏家ばかりであり、技量に大きな差があるわけではない、ということ。1位も2位も5位もない。あるのはその演奏家の個性、音楽性の違いだけだ。だから、クラシック音楽を聴くとは、その演奏家の個性・音楽性を聴く、ということでもある。どの演奏家が自分の感性に合っているか?自分が真に求めているのは何なのか?本当に考えるべきことは、そういうことだ。
(※これを突き詰めると、自分とは何かという、かなり壮大な問題になってしまう)
❸クラシック入門者の正しい買い方、選び方。
では、初心者・入門者は、どのような買い方をすべきなのか?
聴いたことがあるような有名曲をかたっぱしから聴いていく、というのが、入門者が最初にクラシックに入いっていくさいの一番よい方法だと思う。
同じ曲でもいろいろな盤があって迷うかもしれないが、あまりこだわる必要はない。よくある安い盤で十分だ。
まずは、どんな作曲家の、どんな名曲があるのか、を知ることが大事。演奏家のことは二の次で、広く浅くたくさん聴く。そうして、自分の好きな作曲家、曲を見つけていく。最初はそこから入るのがよいと思う。
ここまでが初級だ。枚数にして、普通は50枚ぐらい。せいぜい100枚もあれば十分だ。もっと先に行けば、また違う世界が広がっているが、出費だってバカにならない。その段階で満足したければそれでよいと思う。
❹中級者と入門者では、何が違うのか?
だが、もっとクラシックの奥を知りたい、もっと先に進みたい、という人もいるだろう。そこから先は中級になる。そして、その道はこれまでとは大きく違う。聴き方、鑑賞の仕方が、大きく違うのである。この新しい聴き方により、これまでと全く違う次元の、本格的なクラシック鑑賞への道が、切り開かれていくのである。
新しい聴き方とは、何か?
それは、同じ曲を、様々な演奏家によっていろいろ聴き比べ、鑑賞していくことである。
入門者や他ジャンルの人には、あまりピンとこないかもしれないが、
クラシックは、同じ曲でも演奏家によって全く違って聴こえるのである。たとえば、ロックやポップスの世界にも、カバーというのがあるが、それと同じだと思えばいい。
たとえば、ビートルズの名曲を細川たかしが歌ったらどうなるか?随分と印象が違って聴こえるだろう。
クラシックも、違う演奏家で聴くと、かなり違う印象になる。だから、Aという演奏家の盤ではすごく感動したのに、Bという演奏家で聴くと、まったくダメ、ということがよく起こる。誰がよくて、誰がダメなのか。聴く人によっても、Aの方が良いという人もいれば、絶対にBだという人もいる。どちらがよいかは、実際に自分で聴いてみなければわからない。
だから、お金が許す限り、できれば10人ぐらいで試してほしい。そうすれば、自分の感性に合う演奏が何なのかが、何となく見えてくる。そうなれば、もう立派なクラシック鑑賞者だと言えよう。そうやって、聴き比べを重ねていくうち、クラシックの鑑賞力はいつの間にか身についていく。
そこで活用したいのは、ガイドブックだ。先にガイドブックについてのマイナス面を指摘したが、要は活用の仕方にある。
中級者にとって、ガイドブック活用の最大のメリットは、音楽を聴いたさいの自分の考えと本の著者とのそれとをすり合わせることで、自分の鑑賞力を鍛え、高めることができるということだ。
著者はこう書いているけれど、はたしてそうだろうか?とか、この部分は共感できるなあ、とか、批判的に読みながら、自分の鑑賞力を鍛えていくことができる。だから、意欲的な中級者ほど、たくさんの本を読んでいる。
たった1冊のガイドブックに書いてあることを、真に受け、金科玉条のように思ってしまいがちな入門者のそれとはまったく異なるのである。ガイドブックは、うのみにするものではなく、参考として活用していくものであることをぜひ理解してほしい。
(※鑑賞といっても、入門者の場合は、良いか悪いか、好きか嫌いか、ぐらいしか言えない場合がほとんどだ。こういうのは鑑賞とは言わない。
クラシックを鑑賞するとは何か?それは、音楽を自分の感性に照らして聴いたとき、他の盤との比較において、どこがどうなのかを正しく分析・理解するということ。そして、それを自分の言葉で表現できる、ということだ)
❺まとめ。何が名盤かは、自分で決めるべし!
繰り返しになるが、ガイドブックというのは、著者によって書いてあることはみな違う。だから、1冊のガイドブックをそのままうのみにするのは間違いだ。まずは多くを聴いてほしい。そしてガイドブックを読むのなら、たくさん読んで大いに活用してほしい。やがて、自分の鑑賞力が鍛えられ、レベルアップしていることを実感できるだろう。
上級者にもなると、自分の感性に合った、自分が本当によいと思う盤を、自分の名盤として選定できるようになるものだ。
初心のうちは、オススメの盤を他人に訊くこともあると思うが、不思議なことにそういう盤ほど期待外れに終わるものはない。
私は、他人の価値判断には決定的な意味はないと思っている。ある盤が名盤かどうか、価値があるのかないのかを決めることができるのは、自分だけだ。(了)
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以上、順不同。月1~2回の更新です。
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