中古レコード、CDの買取や販売について、また日々の経営について、考えたこと、伝えたいこと、などいろいろ書いていきます。月に1~2回、更新していく予定です。
昔の店主は、恐かった! 泣く子も黙る、昭和の名店アレコレ。
更 新:2022-09-30
テーマ:店主、自営業者、サラリーマン
昭和の店主(60歳以上)は、なぜ恐かったのか?平成育ちの人と、何がどう違うのか? 昭和という時代を我々現代人は、どう考えたらいいか、などについて、エピソードとともに解説する。
<目次>
❶昔は、怒って、雷を落とす店主は、いくらでもいた!
❷店主とお客の場外乱闘が、実際にあった!
❸店主は横柄で威張っているのは、当たり前?
❹名店と言われる店ほど、プライドも高く、厳しい!
❺昭和は、ストレートな本音の時代だった。
❻現代は、本音が見えない時代だ。
❼本音を発揮し、周囲の空気を変えていく人になろう!
❽去年、店主が大きな雷を落とした現場を、間近で目撃!
★★★次回以降の掲載予定!
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❶ 昔は、怒って雷を落とす店主は、いくらでもいた!
以前、有名ラーメン店の店主が、ガンコで恐い、という話を紹介した。(21/12/31)
中古レコード店や古書店も同様で、昔から恐い店主は多かった。
買取のことで揉め、テーブルを思い切りたたいて「こんなもの買えるか!」と、怒鳴りつけたとか、やはり何かで揉めた挙句、
「帰れ!」と一喝し、追い返したお客さんの背中めがけて塩をぶちまけたとか、本棚を見ていたお客さんに
「あんた!商売人だろう。出てってくれ!」と激怒したとか・・・。
こんな話は、最近は、ほとんど聞かなくなったが、以前はよくあった。今と違い、
昭和という時代は、荒っぽく気性の激しい店主が大勢いた時代だった。
ところで、「商売人だろう!」と怒鳴った古書店の店主は、本の見るスピードが、普通のお客さんにしては速すぎるから玄人ではないか、と判断したらしいが、実は勘違い。
大した確証もないまま、お客さんを犯罪者扱いし、怒って追い出してしまうところが、昭和の店主ならではの、ストレートな凄さだ。(笑)
❷店主とお客の場外乱闘が、実際にあった!
ところで、店主がお客さんを、
グーパンチで殴ったという話は、さすがに聞いたことはない。(あったら大変だ~!) ただし、それに近いことは、過去に実際にあった。
10年以上前。
豊平神社境内で、毎年恒例の骨董市が開かれていたときのことだ。
中古レコードも扱っている某リサイクル店の店主が、最も会いたくないお客M氏と、そこでバッタリ出会ってしまった。M氏は、過去にいろいろあった憎き因縁の相手である。二人は、すぐに口論となり、最後はつかみ合いになっってしまった。
実は、M氏は、SPレコードの道内有数のコレクターで、札幌のレコード業界では、ちょっとは知られた存在だ。しかし、粗暴で強引なところがあり、多くの店で出入り禁止になっている、札付きのトラブルメーカーでもあった。(※ハッキリ言うが、私の見たところ、M氏はお客さんというより、レコードゴロ、レコードヤクザの類と言うべき存在だ。当店でもトラブルを起こしたことがあり、出入り禁止にしていた。)
このような暴力沙汰のケースは、私の長い経験のなかでも、この件以外には聞いたことがない。
❸店主は、横柄で威張っているのが当たり前?
私自身は、過去に自分がお客として行った店で、トラブルになったことは一度もない。だが、びっくりしたことは何度かある。
かなり以前、店を開業する前のある日のこと。ある古書店でのビックリ体験だ。
北大の近くで古くから営業している、老舗有名店がある。ある時そこへ、けっして売れ筋とは言いがたい全集本を、売りに行ったことがある。行く前に、あらかじめご店主と電話で、買取OK(しぶしぶながら)の了解を取っておいたので、問題はないと思われたのだが・・・。ところがそこで、何ともいやな事件が起きてしまった。
行ってみるとそこには、ご店主の代わりに、
当時バリバリの、30代と思われる息子さんが店番をしていた。デスクでどっかり足を組み、何かを読みながら、ふんぞり返っている。いかにも鼻っ柱が強く、くそ生意気な感じの若造に見えた。ちょっと嫌な予感がした。
私は、とりあえず買取の希望を伝え、おずおずと持ってきた本を手渡した。ところが・・である。いや、やはりというか、不安がズバリ、的中してしまった!
若旦那は、チラッとその本を見ると即座に「こんな本は、いらないね!」と吐き捨てるように言い放ち、こちらの鼻先に突き返してきた!ゴミでも放り投げるように。
これにはさすがに驚き、慌てた。客を客とも思わない、なんという横柄な態度!
こんな対応は初めてだ。
私は、一瞬、開いた口がふさがらず、頭が真っ白。どう反応していいかわからなかった。どうやら若旦那は、店主から何も聞いてなかったようだ。(※最初に、電話で話したことについて、きちんと確認すべきだったと大いに反省)
だが、こちらだって遠くからわざわざ足を運んで来ている。簡単には後には引けない。負けじと、「いや、事前の電話では、確かに買取してくれるということだったのですが・・・」と口ごもりながらも必死に抗弁。そうしてバタバタやってると、丁度、奥から高齢の御店主が、何事かと出てきてくれた。事情を話すと、あっさり買取を了承。事無きを得たのだった。
その間、若旦那は、憮然とした表情を隠そうともせず、こちらのやりとりを黙って睨みつけていた。
(※態度は最悪の若旦那だが、経営的判断は正しかったと思う。私の持ち込んだ「日本の詩歌」という全集本は、その当時すでに売れないものとなっていた。高齢の御店主は、他店でも引き取りしていないような本を、お情けで値をつけてくれたにすぎない。ちなみに若旦那は、ご店主亡き現在、
北海道を代表する古書店の経営者として、押しも押されぬ存在となっているのだから、世の中わからないものである)
❹名店と言われる店ほど、プライドも高く、厳しい!
いい仕事をする職人タイプの店主ほど、ガンコで気が短く、厳しくて近寄りがたい。だが反面、仕事には全身全霊で取り組む。妥協をしない。当然プライドは高く、周囲からは一目置かれ、その店は名店と言われるようになる。
名店の店主というのは、例外なくこういう人達である。昭和の時代には、こういう人はたくさんいた。逆に
腰が低く、お客さんに迎合的で、プライドを感じさせないタイプの店主は、人柄は温厚かもしれないが、名店を創る人は少ない。
現在の中古レコード店や古書店などを見ていても、平成になってから出来た新しい店は小粒な印象が強く、本当に良い店はなかなか育たないようだ。
ネット主体で小さくチマチマやっているところが多いのだが、これでは名店に成りようがない。これも時代だろうか。
現在、北海道で名店と言われている店は、昭和~平成初期に創業したところばかりである。
そして今、この業界は、名店不在の時代に突入しつつあると思われる。このままいくと、近い将来、存在感の薄い店ばかりになっていきそうだ。
❺昭和は、ストレートな本音の時代だった。
昭和世代の店主は、確かに単純でストレートで、横柄だ。本音丸出しで怒るから、実に分かりやすい。そして、中古の店主だけでなく、
駅、役所、施設、学校、タクシー、食堂、ありとあらゆる対応が、今より遥かに、荒っぽかった。昭和とは、そういう時代だったのだ。(ただし地域差がかなりあり、東京の接客力はかなり上で、北海道は全国的にも低かった。)
JRが、民営化する前、国鉄だったころの話。
札幌駅の窓口で、私が今何時か尋ねると、「あそこの時計を見りゃ分かるだろう!」と、時計を指さした恐い顔の駅員から、大きな罵声が返ってきた。駅員はブルドックのような顔で、「フンッ!」と大きく鼻を鳴らし、不機嫌そうに顔をプイッ、と横向ける有様だった。今思えば、とんでもなく横柄な態度である。恐るべし、昭和の駅員! 駅員が指差した方角を見ると、壁には確かに大きな時計が掛かっていた。まさに、トホホ・・・である。駅や役所の客対応なんて、当時はこんなものだったのだ。
この時代の怖い存在の代表は、やはり、警官と学校の教師だろう。当時は、暴力は普通だったから、怖いのは当然だ。警官についていうと、今は、違反の取り締まりも、事務的に処理するだけだ。違反者が怒られることはない。
だが昔は、違ってた。ちょっと違反しただけでも、ガミガミ頭から怒られた。なかには、血相を変え、狂ったように怒鳴り散らす警官も少なからずいた。当然、頭にきて警官と口論になる違反者も多かった。交番などでも、警官と違反者がガンガンやり合っている光景を見ることは、しょっちゅうだった。
平成世代の若い人で、活気があって面白い昭和という時代に、単純に憧れを持つ人もいるようだ。しかし、警官や教師が怖いのはもちろん、駅員までがデカイ声で、客に罵声を浴びせていたなど、知らない人が多いのではないか?
❻現代は、本音が見えない時代だ。
話が横道にそれるが、
昭和世代の人に比べ、今の人は本音が見えないなあ、とつくづく感じる。何を考えているのか、何をやろうとしているのか、さっぱりわからない人が多い。
話し方一つとっても、本音を隠したり、ごまかそうとしたりしているような話し方をしているように聞こえる。
世の中全体が、建前やきれいごとですっかり塗り固められ、本音がだんだん見えなくなっているようだ。
(例えば、テレビ業界は、平成以降、建前ばかりになり全くつまらなくなった。)
心理学者の和田秀樹氏は、
現代は、きれいごとの時代である、と言っている。
多くの人は建前の仮面を被り、本音に蓋をして生きている、というのだ。
もちろん社会人なら、当然TPOに合わせて、仮面を取ったり付けたりすることは、当然あるだろう。わかった上で、自由自在にそれができるなら何の問題はない。困るのは仮面に支配され、本来の自分を見失っている人も多いことだ。本当の自分が、仮面の姿なのか、それとも本音が別のどこかにあるのか、わからなくなってしまうのだ。
よく考えなければいけないのは、人間の最も大事な根源的なもの、生命力とかパワーといったものは、すべて本音の中にある、ということだ。人は、自分の本音に基づいて発言や行動をするからこそ、本来のパワーを最大限に発揮できる。
逆に、仮面に支配され、本音を無くした人は、本来あるべき生命力、パワーを失ってしまう。きれいごとを生きるうちに、本来の自分が死んでいくのである。そして、周囲の空気を読みながら、虚無を生きる人になっていく。もちろん、こういう人が、周囲から評価されることはない。若い世代が、貧困化し、さらには、うつ病や自殺者が増えているのも、こうしたことと無関係ではないだろう。(例えば、若い世代の賃金が上がらない原因の一つは、労働組合が昔に比べ、おとなしくなったことだと言われている。)
❼本音を発揮し、自分が周囲の空気を変えていく人になろう!
ところで、「空気を読む」という言い方だが、これは10年ちょっと前から急速に拡散し、今や常識のようになってきた。だが同時に、この言葉は深刻な問題を表しているとも言える。
若い人のいう、「空気を読む」とは、
臆病なウサギが聞き耳を立て、キョロキョロとあたりの様子を窺いながら、コセコセ生きることに似ている。
つまり、人の顔色を窺いながら、受け身的な生き方をしていくということを表しているのだ。今の男性が、
草食化しているといわれることとも大いに関係している。主体性も何もなく、ただ、流されながら生きる人が、増えてきたということだ。
そして、そこから窺えるのは、人とぶつかることを避け、スマートに要領よく振舞おうとはするが、実際には、きれいごとばかりで薄っぺらく軟弱な現代人の姿である。自分の本音を堂々と打ちだしていく、という主体的、積極的な姿勢は、すっかり影を潜めてしまっている。
厳しいことをいえば、
こういう人には、自分の将来を切り開いていく力がない。なぜなら、それをやるには、自分の本音に基づいた努力を、積極的に積み重ねていく必要があるからだ。
本音を出していくのは、確かに勇気がいる。
しかし、本音(信念)を打ち出すことで、自分の人生を切り開くことができる。「空気を読む人」とは逆に、自分が「「周囲の空気を変える人」または、「新たな空気を創り出す人」になっていってほしいと思う。
そのさい、人とぶつかることを恐れてはいけない。自分の人生を進む人が、他人と全くぶつからないわけがなかろう。若い人は、自分の本音を力強く生きることが、目指す理想に到達する、唯一本来の道であると、理解してほしい。
話を元に戻す。
昭和の店主が、荒っぽくガンコで短気なのは、常に自分の本音をストレートに表出しているからだ。たとえ理不尽だと思えても、それは健康的な性質のものであり、タフな自営業者として生きていくための、大きな原動力になっている。(本音をしっかり押し出していかないと、当然ながら店主にはなれない。)
若い人は、理不尽さをぼやくばかりではなく、そこから何かを考え、学んでほしい。
さて、本音で生きるということについて、昭和と現代の人を比較してみているが、
周囲から
我儘で自己中心だと思われるような、本音の発揮のしかたは、やはり問題があるだろう。昭和と現代は時代が違うということもある。
ただ、現代には現代の、昭和とは違う、本音の発揮の仕方がある。
このテーマは、深くて難しい。またの機会にしっかりやりたい。
❽去年、店主が大きな雷を落とした現場を、間近で目撃!
最後に、私が最近目撃した、昭和の店主が激怒した話をご紹介しよう。
札幌の中央区に、
N書店という昭和創業の有名古書店がある。児玉清によく似た、70代後半と思われる高齢のご主人は、普段は実に物静かな紳士だが、威厳があり、怒ったらちょっと恐そうな雰囲気を持っている人である。
昨年のこと。私もたまに行くその店で、驚くべき光景に出くわした。
店内にいた初老のお客さんが、カウンター近くのベンチのような長い椅子を指して、「ちょっと、ここに座って本を見たいのですが。」と、店主に断って腰を掛け、本を静かに見始めた。
ちょっと間があり、その次の瞬間だった。
静かだった店内で、突然、物凄い雷鳴が鳴り響いた。店主が、割れんばかりの大声で、「本が傷むから、背中を書棚に持たれかけないでほしい!!」と、そのお客さんを注意したのだ。
店内の棚やガラスががビリビリと振動するかのような、物凄い声だった。驚いて店主の顔を見ると、鬼のような形相の店主の顔がそこにあった。「絶対に妥協を許さない!」という、厳しい決意の表情だ。(言われたほうも、さぞやビックリしたろう。)
お客さんが座った椅子には、背もたれがなかった。うっかり本棚に直接、背中をもたれかけてしまったのだ。
それにしても、このような光景を間近で目撃するとは。あの寡黙な紳士のご主人が、こんなに激怒するとは。正直、驚いた。
ご主人は、お客さんが姿勢を直したことを確認したのか、何事もなかったように、またいつもの穏やかな紳士に戻っていった。寡黙な中にも絶対に妥協を許さない、気骨のある本物の昭和の店主の姿が、そこにあった。(完)
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